性的行為を要求して拒否されると不当な扱いをする行為
対価型セクシャルハラスメンとは、部長や課長などが部下等に対して性的行為を要求し、拒否されると相手に制裁を加える嫌がらせです。
事例としては事業主が性的行為を強要したり人事考課を条件に性的関係を迫ったりして、それを拒否されたことで解雇や降格をさせる行為や、人事担当者の性的好みで雇用上の待遇に差をつけるなどの行為があります。
企業が取るべき社内で起きるセクハラ対策とは
セクハラは「性的な嫌がらせ」です。男性から女性へのセクハラだけでなく、女性から男性への性的嫌がらせもセクハラとしてみられるケースもあります。
ここでは実際に起きたセクハラ事例や企業ができるセクハラ対策の事例などを紹介しています。
職場で起きる様々なトラブルの原因になるセクハラとは
セクハラは男女雇用機会均等法によると、「職場内で本人の意に反する性的な言動」と定義されています。男女雇用機会均等法は、職場内で男女を平等に取り扱う法律で、11条では事業者に対してセクハラ対策を講じるように義務付けられています。
職場内のセクハラには、「対価型」「環境型」の二つがあり、「対価型」は地位を利用して相手に不利益を与えるセクハラです。「環境型」は性的言動により職場の秩序を乱すセクハラになります。
性的行為を要求して拒否されると不当な扱いをする行為
対価型セクシャルハラスメンとは、部長や課長などが部下等に対して性的行為を要求し、拒否されると相手に制裁を加える嫌がらせです。
事例としては事業主が性的行為を強要したり人事考課を条件に性的関係を迫ったりして、それを拒否されたことで解雇や降格をさせる行為や、人事担当者の性的好みで雇用上の待遇に差をつけるなどの行為があります。
肉体関係を拒否して退職に
専務から肉体関係を要求された女性従業員が、それを拒んだために降格されて、退職を余儀なくされた。
飲み会の帰りに性的行為を要求
飲み会で三次会まで参加。タクシーの中で男性上司からキスを強要された精神的苦痛から半年後に退職した。
酒に酔った勢いで女性に乱暴
忘年会の席で酒に酔った勢いで女性の背後から抱きついて写真を強要し、床に押し倒して馬乗りになった。
セクハラでうつ病を発症
上司にカラオケに誘われてキスを強要される。拒否したため職場でも気まずい雰囲気になり、うつ病になった。
不当利益による配置転換
出張中に車の中で上司が女性従業員の身体を触って抵抗されたので、不当な理由で女性従業員を配置転換した。
間接的な言動をして性的嫌がらせをする行為
環境型セクシャルハラスメントとは、性的な言動から職場内の秩序を乱したり、従業員を不快にさせたりする行為です。「視覚型」「発言型」「身体接触型」の3つに分類されます。
異性関係の非難で退職に追い込む
編集長から異性関係について非難する発言を受けた女性社員は、会社に居づらくなって退職を余儀なくされた。
女性社員の前でヌード画像を表示
女性社員が抗議しているにも関わらず、ヌード写真をパソコンのスクリーンセーバーに使用していた。
同僚女性の心ない言葉に傷つく
女性の同僚から「臭いからあっちに行って」といつも言われるため、精神的な苦痛になっている。
卒論指導時にキスを迫る
大学助教授が、卒論指導時に女子学生にキスを迫ったり身体に触れたりして、性的な嫌がらせをした。
性的な冗談で女性をからかう
社内で顔を合わせるたびに、猥雑な話をしたり、容姿や身体などについて必要以上に聞いてきたりする。
企業が取るべき9つのセクハラ対策
個人間のトラブルにされがちなセクハラですが、放置しておくと企業の会社責任が問われるケースも少なくありません。
男女雇用機会均等法では、職場におけるセクシャルハラスメント対策として、以下の9項目を義務付けています。
上記の対策をきちんと講じることで、セクハラを未然に防ぎ、再発を防ぐことができます。
セクハラが発生しない会社作りは弁護士と共に
セクハラを発生させないためには、まず企業法務の強化が重要です。企業としての対応を明確にすることで、トラブルを未然に防げます。そのために重要なのは、法律の専門家である弁護士の存在。です。
顧問弁護士をつけるのが一般的ですが、まずは弁護士への無料相談サービスなどを活用し、対処をしていくようにしましょう。
企業が取るべきセクハラ対策「セクハラ指針」
男女雇用機会均等法の「セクハラ指針」には、職場における性的言動に対して、雇用主が講ずべき措置が示されています。
この指針は、セクハラによって労働者の就労環境を守るために、企業が取るべき措置を記したものです。
これまで広義での男女間の性的嫌がらせを「セクハラ」としてきましが、レズビアンやトランスジェンダーのようなLGBT(性的少数派)が増えきた現状を踏まえ、見直しが迫られていました。
2017年1月に「セクハラ指針」が改訂されると範囲が広がり、LGBTへのセクハラも対象になっています。企業としてもセクハラのない職場の実現へ雇用管理の対策が必要です。
企業の方針と対策を明確化して迅速・適切に対応する
雇用機会均等法の中に、企業がセクハラに対して講ずるべき措置が明文化されています。
職場でセクハラがあってはならないこと、それに対する事業主の方針を明確化にします。
また職場でセクハラがあった場合は、加害者に対して厳正に対象する旨を、就業規則等に規定して全従業員に周知・啓発します。
職場でセクハラが起きた場合は、事実関係を迅速に調査して、加害者に対して適切な処分を下します。被害者に対しての適切な処置が求められます。また再発防止に向けて、対策を講じる必要があります。
セクハラが原因で発症した精神疾患は労災の対象になる
上司や同僚からセクハラを受けると、その苦痛から精神的に追い詰められてうつ病やPTSDなどの精神疾患を発症するケースがあります。
ある経理女性は、事務室で仕事をしている時に上司が入ってきて、抱きつかれたりお尻に触れる性的な嫌がらせを受けていましたが、公にすると職場に居づらくなるので我慢していました。
半年ほどセクハラが続いたので本社の相談窓口に相談しましたが、それが原因で別の上司や同僚から誹謗中傷を受けるようになり、うつ病を発症して労災認定を受けました。
職場でのセクハラが原因でうつ病を発症すると、労災認定の対象になるので、企業としての適切な対応が求められます。
セクハラといえば「身体を触られた」「セクハラ的な発言をされた」、そのような認識の方がほとんどではないでしょうか。 しかし、セクハラには強姦罪や強制わいせつ罪に罰せられるような、悪質なものも存在します。
「身体を触られた」ことや「セクハラ発言をされた」といった場合には示談で解決できることもあります。しかし、強姦罪や強制わいせつ罪にあたる、肉体関係の強要などの事例が発生してしまった場合には、会社の力だけではどうにもなりません。
その場合は裁判所で解決せざるをえない状況となります。 他にも、第三者からみれば軽度であると感じても、被害者にとっては深刻な問題です。精神的にもかなりのダメージを負っているでしょう。
そういった悩みを相談したにもかかわらず、上司に軽くあしらわれてしまえば、もっと大きな問題に繋がります。会社側もセクハラに対応できる体制を整えなければなりません。
まず最初にセクハラ相談を受けた場合、話を聞くことが大切です。
セクハラの内容によっては、会社側がとるべき対応は変わってきます。そこで被害者に対して軽率な発言をしてしまうと、興奮状態に陥り、最悪の場合は裁判になり、会社自体が存亡の危機に晒される可能性があります。
相談を受ける側も細心の注意を払わなければなりません。 しかし前述の通り、セクハラの内容によっては相談内容も変わってきます。そこで必要になるのは、柔軟に対応できる「アドリブ力」です。
上記で、相談を受ける側に必要なものは「アドリブ力」だとお伝えしましたが、すぐにカウンセラーレベルのアドリブ力をつけろと言っても無理があります。 そこで、セクハラ相談を受ける側が抑えておくべき大事なポイントを2つにまとめました。
この2つのポイントを抑えておけば、セクハラを受けた被害者を傷つけることや、興奮状態に陥ることを防ぐことができます。それでは2つのポイントについて詳しく説明します。
まずは1つ目のポイントは、相手の気が済むまで話をきいてあげるということです。被害者側には、必ずしも「私の話をきいてほしい」という気持ちがあります。そう言った気持ちがなければ、相談はしてこないでしょう。
ですので、相手の気が済むまで話をきいて、気持ちをスッキリさせてあげることが大切です。しかし、理由はそれだけではありません。
相手が気が済むまで話すことによって、どのような状況、場所についての証拠を得ることができるのです。証拠を知ることができれば、あとは事実を確かめるだけになります。ですので、相手の気が済むまで話を聞くことで、気持ちをスッキリさせてあげる効果もありますし、どういった被害を受けた事実があるのかを理解することができます。相談を受ける際には、このポイントを意識するようにしましょう。
2つ目のポイントは、決して否定をしないということです。冒頭でも触れましたが、被害者は話をきいてもらい「少しでも楽になりたい」「この問題を解決してほしい」という思いを抱いています。
そういった思いで相談しているのにも関わらず、相談を受ける側が「考えすぎじゃない?」「それはあなた(被害者)が間違っている」などと言えば、被害者は相当なショックを受けてしまいます。
最悪な場合では「自殺」に繋がる可能性も考えられます。人命を守るという意味でも、セクハラ相談を受ける場合には、決して否定をしないようにしましょう。
続いては「実際にセクハラ相談を受けた場合の対応」を具体的に紹介します。
まずは被害者を個室に案内し、相談をきいてあげましょう。これには、プライバシーを守ることと、被害者に本音で事実を話してもらうといった意味があります。
他の職員のいる中でセクハラ相談をすると、被害者は周りの目が気になるだけではなく、本音を話せないといった可能性もあります。周りの目が一切ない個室に案内し、ゆっくりと話を聞いてあげることが必要です。
個室に案内したあとは相手の気が済むまで話を聞き、本音を聞き出すとともに精神的な負担を軽減させてあげましょう。
相談内容を元に、それが事実であるのかどうかを確認しましょう。具体的な内容は、加害者側に話を聞き、被害者と加害者の話の中で食い違っている点などを見つけ、確認作業を行なっていきます。
ただし、食い違っている意見が見つかったからといって、すぐ被害者と加害者を話合わせるとお互いが興奮状態に陥り、まともに話し合うことができない可能性があるので注意すべきです。
相談内容の事実確認を行ったあとは、どういった対応をとるのかを決めましょう。被害者が加害者と話し合いの末に解決した場合には、部署を変えるのか変えないのか、といった判断で済むでしょう。
しかし、相談をしても、被害者の納得が得られない場合、加害者に直接謝罪させることや、部署を変える。最悪の場合は、加害者をクビにすることも考えなければなりません。会社側の対応としては、どのような結果になったとしても、慎重に対応する事が大切です。
会社側はセクハラに対応するための体制を整えておく必要があります。
先ほどの「セクハラ相談を受けた場合の対応手順」でもご説明した通り、個室を用意しておくこと。また、柔軟に対応ができるスタッフも必要です。その他にも、会社のルールである「就業規則」その中にも、セクハラに関する規則を定めておく必要があります。
会社側が社内で発生したセクハラに対処する体制を整えておく事で、職員も安心して働く事ができるでしょう。
性的暴行や肉体関係が絡んでくる場合には、会社だけではどうにもできません。もしそのような事態が起こった場合には、セクハラや性的暴行に詳しい弁護士に相談すべきです。
セクハラの中でも、性的暴行はもっとも罪が重いものになります。会社だけで対応するのではなく、適切な対処をとってもらいましょう。
被害者の中には、感情が高まりすぎているケースがあります。その場合に気をつけることは、絶対に否定をしないということです。相談を受ける側が「それはセクハラではない」と感じても、被害者はセクハラをされたと思い、精神的にも非常にショックを受けています。
そういった状態にも関わらず、相談を受ける側が否定をしてしまうと、被害者を傷つけることになり、最悪の場合は鬱など社会復帰が難しい事態を招いてしまう可能性があります。感情がかなり高まっている場合は、まずは落ち着かせる事が先決です。被害者を落ち着かせる事ができれば、被害者にとっても会社にとっても良い解決に導く事ができるでしょう。
現代では、セクハラに敏感な方が多い傾向にあります。それに伴って、セクハラの相談を受ける会社も増えてきています。
しかし、その問題に迅速に対応できる能力を持ち合わせてない会社がほとんどです。対応する事ができなければ、最悪の場合は会社存亡の危機に陥る可能性も否めません。
万が一のセクハラが起こった場合にも対応できるように、セクハラに対する万全な体制を整えておく事が必要です。職員を守る、会社を守るためも必ずそういった体制を整えておきましょう。
セクハラ裁判や訴訟で企業に求められる賠償責任
セクハラが起きると企業として負うべきリスクが非常に大きくなります。
被害者や加害者の処分や精神的、社会的負担が重すぎると、裁判や訴訟に発展して、賠償責任を負わされる事例も少なくありません。