海外PL保険の補償範囲
海外PL保険イメージ

法人の火災被害や水災被害などを補償する保険

社屋や工場、倉庫などを火災で焼失した場合、会社の体力によっては、経営維持が困難になる恐れもあるでしょう。まだ法人向けの火災保険に加入していない経営者はもとより、すでに加入済みの経営者においても、その補償内容で本当に良いのかどうか、改めて確認してみることをお勧めします。

法人が火災保険に加入する必要性

私たちの記憶に新しい「法人の大火災」に、2017年2月に発生した、某オフィス用品通販会社(以後A社)の倉庫火災が挙げられます。巨大な倉庫だったこともあり、周辺住民には避難勧告発令。火災発生から鎮火まで、実に6日間を要した大規模な法人火災でした。

この火災における法人としての被害額は、総額で約200億円。保管していた品物の損失だけではなく、倉庫を起点に生まれる一定期間の利益までも失われました。

幸い、A社は売上高3000億円を超えるほどの財務体力があったため、会社の存続を維持することができました。しかしながら、取引企業の中には、経営維持ができなくなったところがあったかも知れません。

貴社のメイン社屋・メイン工場が焼失し、建物の損害に加えて一定期間の売上・利益までも失った場合、貴社は以後も健全に経営を維持できるでしょうか?業活動がストップしている間でも、社員全員の給与を支払い続ける財務体力があるでしょうか?

今一度この点を熟考のうえ、法人向け火災保険の加入や見直しについて検討してみることをお勧めします。

火災保険の補償範囲とは

火災保険で補償される範囲は、個人宅向けの火災保険と同様に、火災のみではありません。多くの法人向け火災保険において、火災の他にも次のような損害がカバーされています。

  • 落雷による建物への被害
  • 破裂・爆発による建物への被害
  • 風災・雹災・雪災による建物への被害
  • 外部からの物体の落下・飛来・衝突などによる建物への被害
  • 排水事故の水漏れなどによる建物への被害
  • 騒擾や労働争議などによる建物への被害
  • 盗難による被害
  • 水災による建物への被害、他 [1]

火災保険の補償項目の中で、最も保険金支払「額」が大きい被害は、やはり火災です。建物に一度火が点くと回りが早いため、被害が大きくなってしまうからです。

一方、最も保険金支払「件数」が多い被害は、意外なことに水災です。昨今では、地球温暖化などの影響もあり、世界各地でゲリラ豪雨が多発しています。

日本国内でも例外ではありません。川の堤防が決壊して社屋や工場が水災被害に遭ったり、大雨の影響による土砂崩れによって社屋や工場が流されるといったケースもあります。

様々な不測の事態に備えて、個人でも法人でも、建物の保険のベースには火災保険を置いておくべきでしょう。

なお、個人宅向けの火災保険と同様、法人向け火災保険においても、地震による被害は補償されません。よって、地震により社屋・工場への直接的被害はもちろん、地震によって生じた水災被害(津波など)も補償の対象とはなりません。

地震に関連した被害の補償を希望する場合には、火災保険をベースにして、地震保険に加入する必要があることを理解しておきましょう(地震保険だけに単独で加入することはできません)。

法人が火災保険に加入する際のポイント

先に紹介したA社の大火災では、被害総額が200億円であったことに対して、火災保険から支払われた保険金は45億円でした。45億円という金額だけを見れば高額ですが、倉庫の存続を考えた場合、保険プランとしては失敗だったと言わざるを得ません。

なぜ、この例において適切な保険プランの設定がなされていなかったのでしょうか? その理由こそ、法人向けの火災保険に加入する際のポイントにもなります。

■物件の状況をしっかりと確認する

A社の火災被害が拡大した大きな理由は、次の通りです。

  • 窓が少なく消防隊の侵入口が限られた
  • 保管物に燃えやすい紙素材のものが多くあった
  • 火元の近くにスプリンクラーがなかった
  • 太陽光パネルを増設するなどしたため、消防活動の妨げとなった

A社は、これら倉庫の現状をしっかりと把握した補償内容にすべきでした。あるいは、これら倉庫の現状を改善すべきでした。補償を手厚くするか、もしくは消防対策をしっかりと行なうか、どちらかの対策を打っていれば、A社における被害総額は大幅に抑えられたことでしょう。

法人向け火災保険を検討する場合、または更新する場合には、その時々の物件の現状を正確に把握することが大前提です。

■何を重点的に補償して欲しいのかを決める

複数の物件を保有している場合には、何を重点的に補償して欲しいのかを決めるようにしましょう。

「設備の一部を失ったとしても、建物だけは絶対に守りたい」「建物はプレハブなので、設備や什器を主に守りたい」「完成品を多く保管しているため、とにかく商品だけは守りたい」などです。

重点を置く項目に応じて、物件ごとの補償内容に強弱をつけることができるでしょう。

これによって、すべての物件に一律で保険をかけるよりも、保険料を大幅に節約することができるはずです。

■適切な免責額にする

免責額とは、万が一火災等によって被害が生じた際の、法人による自己負担金のこと。保険金は、免責額を超過した部分のみ支払われる仕組みになります。

たとえば、免責額が1000万円で1500万円の被害が生じた場合、支払われる保険金は差額の500万円になります。

もちろん、免責額が大きければ大きいほど、万が一の補償額は小さくなります。一方で、免責額が大きいほどに保険料は安くなるというメリットもあります。

保険料を節約する目的で、免責額を高く設定する経営者もいるようです。しかしながら、万が一の時に備え、保険料が多少高くなったとしても免責額はほどほどにしておくことをお勧めします。

社屋・工場の焼失によって一定期間の売上・利益も失われる

仮に、個人の住宅が火災で焼失した場合、極論をいえば失うものは建物のみです。火災保険が万全であれば、新築までに多少の不便はあるものの、自己負担がほとんどなくして新たに家を建てることができるでしょう。一方、社屋や工場などが火災で焼失した場合、建物とともに、一定期間の売上・利益まで失われます。今一度、法人向けの火災保険の意義を考えてみるようお勧めします。

法人で火災保険に入るのは、リスク対策だけが目的ではありません。法人が火災保険に加入するメリットはいくつか存在します。

火災保険料は損金として算入できる

火災保険は業務に関係する損金として経費に計上することができます。そのため法人の火災保険への加入は、経営危機回避や従業員に対する保証をしながらも、法人税の節税ができるのです。

また、積み立て型の法人保険であれば、財政確保のひとつとして活用することもできます。資金繰りに困ったら、積み立て型の保険を解約すると解約返戻金が出てまとまった資金を手に入れることも可能。節税と財源確保を両立できる可能性もあります。火災保険はほとんどの会社が加入する保険であるはずですから、こういう保険のメリットをどんどん活用していくと良いでしょう。

手間とコストを考えて適した保険に一元化することも一つの方法

ただ、法人保険をいくつも契約すると事務処理が煩雑になり、契約更新や補償を把握するだけでも一苦労です。特に、複数の工場や事務所を抱えている企業であればなおさら処理が煩雑になり、もしもの時に受けられるはずだった補償を見逃してしまった…という事態も考えられます。

法人保険の数が多いほど解約返戻金が増えていくわけではないうえ、保険料が節税効果と見合わないほど高くなってしまう可能性も考えられます。複数の建物がある場合は、保険を一つにまとめることでコストダウンにつながることもあるので、企業経費を圧縮することができる損害賠償責任保険の包括契約を検討するのもよいでしょう。

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