従業員の交通事故における企業の責任
従業員が社用車またはマイカーにて交通事故を起こし、他人の身体や財物に損害を与えた場合、会社は以下の2つの法的責任を負う可能性が出てきます。
従業員が社用車やマイカーで交通事故を起こした場合、会社は、事故の被害に対する損害賠償責任を負う可能性があります。以下、具体的な損害賠償の判例や、従業員の事故において会社が負うべき責任について具体的に解説します。
従業員が起こした交通事故に対する会社の損害賠償責任
社用車を多く所有する会社、または、マイカー通勤を承認している会社においては、従業員の事故による会社の損害賠償責任を常に考えておかなければなりません。万が一、従業員が起こした事故で他人を死亡させた場合、会社には億単位におよぶ損害賠償を命じられる可能性があります。従業員がプライベートで社用車を使用して事故を起こした場合でも、「従業員が勝手にやったこと」では済まされません。
従業員の交通事故による会社への賠償責任事例
従業員が「会社のため」に行った運転で交通事故を起こした場合、その被害への損害賠償は、運転者のみではなく会社にも及ぶことが一般的です。 以下、従業員が起こした交通事故により、会社に賠償責任が認められた判例について2例ほど見てみましょう。
工事現場での仕事を終えた従業員が、社用車で現場から帰宅。帰宅途中に事故を起こして他人に被害を与えた事例で、裁判所は、会社の運行供用者責任を認め被害者に対して損害賠償を命じました。社用車での帰宅について、会社は承認していたことが判決の背景にありました。
マイカー通勤をしていた従業員が、会社からの帰宅途中に事故を起こした事例。裁判所は会社に対し従業員の監視・監督義務を認め、被害者への損害賠償を命じました。判決の背景には、会社が従業員のマイカー通勤を黙認し、かつ会社の駐車場の使用も認めていたことがありました。(最高裁平成元年6月6日判決)
従業員の交通事故における企業の責任
従業員が社用車またはマイカーにて交通事故を起こし、他人の身体や財物に損害を与えた場合、会社は以下の2つの法的責任を負う可能性が出てきます。
運行供用者責任とは、簡単に言えば「会社の利益のために行った運転で事故を起こした場合、会社は、その損害賠償責任を負う」という決まりのこと。自動車補償法第3条の規定です。運行供用者責任が問われる典型的な例としては、たとえば、従業員が取引先に移動する際に起こす事故が挙げられるでしょう。
また、上でご紹介した事例のように、たとえ事故車両が従業員のマイカーであり、かつ通勤のみに使用していたとしても、その使用を会社が黙認している場合には「会社の利益のために行った運転」と認められます。よって、会社は被害者への損害賠償責任を逃れることはできません。
従業員の「行為全般」で生じた被害への損害賠償
使用者責任とは、簡単に言えば「会社の利益のために行った行為で、従業員が他人に被害を与えた場合、会社は、その損害賠償責任を負う」というもの。自動車事故に限らず、幅広く適用される法律です(民法715条)。なお、使用者責任を根拠に被害者が損害賠償を求める場合、被害者は、会社に過失があったことを立証しなければなりません。
それに対し、運行供用者責任を根拠に被害者が損害賠償を求める場合、被害者は、会社の過失を立証する必要がありません。よって被害者が会社に損害賠償を求める際には、一般に、運行供用者責任を根拠に訴訟を起こします。
過去の判例において、「行為の外形」のみで判断した場合、「あたかも会社の業務の一環であるかのように見える事例」について、裁判所は会社の使用者責任を認めています。具体的には、従業員が社用車(会社のロゴ入りなどの外形)をプライベートで使用中に事故を起こした場合、会社は、その被害の損害賠償責任を負うというものです。
従業員が起こした事故によって生じた被害のうち、一般的な法人向け損害保険では、以下の補償をカバーしています。
他人の身体や財物に被害を与えた場合、この損害額を補償します。
運転していた従業員や、どの同乗者が事故によって死傷した場合、治療費や葬儀日等を補償します。
事故によって車両に損害が生じた場合、その修理費等を補償します。
保険商品によって補償の範囲が異なるため、万が一に備え、改めて加入中の損害保険の補償内容を確認しておくようにしましょう。
損保ジャパン日本興亜は、従業員による横領・盗難等によって企業に生じた損害について、これを補償する保険商品を用意しています。 補償の具体的な範囲は、パートや臨時雇用従業員を含めた一切の従業員が犯した企業の損害。補償される被害の範囲には、横領や盗難のほかにも、詐欺や背任行為などによって生じた損害も含まれています。保険料や条件に応じ、支払い限度額の上限は10億円です。 なお加入の対象は、上場企業やその子会社など、一定の社会的信用力のある企業に限定されます。