労働災害を未然に防ぐために会社が配慮すべきこと
安全配慮義務とは、「雇用している労働者の生命と健康が保てる環境を、雇用者が必要な配慮をしながらつくる義務」のことです。災害の発生を未然に防ぐために、雇用者はあらゆることを想定して配慮することが求められます。
安全配慮義務というように、これはあくまで「義務」ですから結果責任ではありません。つまり、何らかの労働災害が生じても、それなりの防止策を講じていれば安全配慮義務違反に基づく損害賠償責任は逃れられます。とはいえ、裁判になった場合には、その防止策について厳しく判断されるのが通例です。
安全配慮義務の具体的内容
安全配慮義務の内容は、主に「設備・作業環境」の面と「人的措置」の2つに大別されます。
設備・作業環境では、労働者が安全に使えるよう機械などの設備を保つこと、危険を伴うおそれがある場合には保護具などを用意することなどが挙げられます。
人的措置では、安全に働けるよう労働者に教育訓練を受けさせる、監視人をつけて作業させるといったことが義務として挙げられます。
安全配慮義務が及ぶのはどこまで?
契約上では企業(個人事業主)が負う
安全配慮義務の責任を負うのは、その労働者と雇用契約をしている事業主(企業)にあります。とはいえ、実際に会社を運営しているのは工場長であったり、その労働者の上司(部長や課長など)ですから、こうした現場の管理監督者が安全配慮義務の履行補助者とみなされます。万一労働災害が起きた際には、履行補助者が責任を負うことがあります。
パートやアルバイト、派遣社員も及ぶのか
パートやアルバイトといった非正規の労働者に対しても、安全配慮義務は及びます。雇用者は、十分な教育を受けさせ労働災害を未然に防ぐ配慮をするのは当然のことでしょう。
また、派遣社員の場合は雇用契約は派遣会社との間にありますが、実際に作業の指導をするのは派遣先の企業であるため安全配慮義務を負うことになります。
下請け・出向の労働者の場合
直接的に雇用契約がない下請け労働者であっても、元請けの現場責任者が作業の指導などをおこなっていた場合には、安全配慮義務が認められます。
一方、出向している労働者の場合は出向元・出向先の両社が、安全配慮義務を負うのが通例です。