パタニティハラスメントと会社の責任

パタハラに対する企業の対策

男性の育休取得を理由に職場内で発生しているとされるパタニティハラスメント(パタハラ)。ここでは、パタハラの正確な意味やパタハラに対する企業の対策、パタハラに関連する政府のデータ等をご紹介しています。パタハラ対策は、企業の存続と発展のための重要なリスクヘッジになるでしょう。

パタニティハラスメントとは

育休を取る男性に対する嫌がらせ

パタニティハラスメント(パタハラ)とは、「父性」という意味を持つ英語「paternity」と、「嫌がらせ」という意味を持つ英語「harassment」を組み合わせた言葉。一般には、育休を取る男性社員に対する嫌がらせを指して、パタニティハラスメントと言います。

いわゆる働き方改革の浸透により、近年では育休を取得する男性が急速に増えてきました。しかしながら、もとより日本では育休を取得する男性が限りなくゼロに近い状態だったことから、まだまだ育休を取得する男性の比率や絶対数は低い状況です。現状、多くの職場では育休を取る男性が「目立った存在」になってしまうことを否めません。

パタハラ企業とならないための方法

男性の育休取得が当然である文化を作る

パタハラ企業にならないための有効な方法は、男性の育休取得が当然である文化を、会社に定着させるしかないでしょう。時間はかかりますが、たとえば次のような対策を取り続けることで、徐々に社内からパタハラという発想が消えていくのではないでしょうか。

  • 男性社員の育休を社内制度化する
  • 男性社員の育休制度を社員全員に周知する
  • 男性上司が率先して育休を取得する
  • 古い考えを持つ管理職に繰り返し研修して意識改革を促す
  • 仕事と育児を両立させた男性社員を表彰する
  • パタハラの相談窓口を設置する
  • パタハラが報告された場合には会社が迅速に適切な対応をする

厚生労働省で見るパタハラデータとは

パタハラが起こりうる土壌は依然として残っている

厚生労働省のデータでは、育休を取得する「女性」の比率は長く80%以上をキープしていますが、育休を取得する「男性」の比率は極めて低い状況です。

政府が働き方改革を議論し始めて以降、男性の育休取得率が急上昇しているものの、急上昇した平成30年度の取得率は6.16%程度。令和2年度には12.65%まで上昇しましたが、まだまだ改革とはほど遠い数字と言って良いでしょう。

この比率の中で育休を取得する男性社員は、残念ながら職場では「目立った存在」になることを避けられません。一昔前の感覚から脱皮できない承認欲求の強い上司・先輩社員に囲まれれば、パタハラが起こる可能性はあるでしょう。

パタハラに対応する必要な体制を整えておく

パワハラやモラハラという言葉が浸透した結果、パワハラもモラハラも減ってきた感覚があります。ただし、これほど広く報道されているにも関わらず、パワハラもモラハラもゼロにはなりません。パタハラもまた同様で、言葉が浸透した後も、しばらくは残り続けると考えておいたほうが良さそうです。

会社としては、パタハラを予防する各種の対策を講じることと並行し、パタハラが起こったときに必要な体制を整えておくことが大切でしょう。

パタハラで訴訟になる前に弁護士へ相談

パワハラやセクハラなどのハラスメントは、これまで表面化することなく、ほとんどのケースで泣き寝入りの状況でした。しかし徐々に声を上げる方も増えていき、訴訟に発展するケースも増加傾向にあります。パタニティハラスメントも同様で、男性の育児休暇取得を拒否する、育休明けに不平な対応を取るといったケースで数多くの訴訟が行われているのが現状です。そのため企業にとってはパタハラが起きない環境づくりや社員教育が必要不可欠なのです。これまでは問題がなかったから大丈夫と安易に考えていると、取り返しのつかない状態に陥ることもあるでしょう。

もしもの場合に備え、企業法務に詳しい弁護士へ相談できる環境を整え、従業員からの真剣な訴えをしっかりと受け止めるようにしましょう。各事例に対し冷静に判断して解決していくことが重要です。大規模な企業であれば顧問弁護士を雇うという方法もありますが、小さな規模の企業であれば顧問弁護士を雇うことは経営に大きな負担となりかねません。その場合には弁護士への無料相談サービスなどもあるので、そういったサービスを活用して問題解決を図りましょう。

実際にあった訴訟・判例

基本的に何らかのハラスメントが起きれば企業内で調査を行い、適切な措置を行うのが一般的です。しかし調査や措置の内容によっては、被害者が加害者や企業に対し訴訟を起こすケースもあります。具体的にどのようなパタハラによって裁判になったのか、賠償額はどの程度かなどを見ていきましょう。

被害者が訴訟を起こすケース

事例1:男性看護師の育休による職能給を認めなかったケース

男性看護師が、病院側を訴えた事例です。男性看護師は3か月間の育休を取得。復帰したものの、翌年育休取得を理由に職能給の昇給を認めずに昇級試験の受験機会も認めませんでした。男性看護師は労働局に訴え、是正勧告も行われたが、病院はそれに応じなかったため損害賠償を求め提訴しています。裁判の結果、不法行為の成立を認め損害賠償の支払いを命じる判決が出ました。育休を取得する社員に対し、経済的不利益を与え、育休の取得を抑制するものであり公序に反するとして、病院側の意見を退けています。

事例2:育休によって業務から外されたケース

証券会社に勤務している男性は、パートナー女性が外国の地で出産するのを受けて育休を申請。会社側は親子関係を示すDNA鑑定書を提出するまで、育休取得を認めないとした。育休取得後は会議に呼ばれない、海外出張から外されるなど、一部業務からはずされたと主張。証券会社側は業務変更に応じなかったとして、休職命令を出した。その結果、精神的苦痛と育休取得後に受けた不利益に対する慰謝料、さらに地位確認を求め提訴しています。育休取得前後の会社の対応は違憲とは言えないという判決が出ました。ただし、この事例に関しては高裁にて控訴中のため、判決自体は確定していません。

事例3:育休によって地方に出向したケース

東京都内でプロモーション業務を担っていた男性。社内通報を機に転属となり、商品の荷受けや検品などの業務を与えられたとし、過小な業務を割り当てるハラスメントにあたると主張しています。さらに、その後長男誕生時に1年間、次男誕生時に1年間、それぞれ育休を取得。長男の育休明けで地方にある物流センターへの出向が命じられ、この異動はパタハラにあたると主張しています。出向が解かれたあとも、能力に見合った業務を与えられていないとして勤務先を提訴。この事例は係争中であり、判決は出ていません。

まとめ

2022年の10月頃から、男性における出生時育休制度が開始される見通しです。また、2023年4月からは、大企業における男性の育休取得率の公表が義務化されます。

国の制度の後ろ盾がある状況なので、企業は自信を持って男性の育休取得、パタハラ防止の施策を進めるべきでしょう。

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