暴力を加えて身体に危害を加える行為
上司など力のある者が、部下を叩いたり、殴ったり、蹴ったりして、身体に危害を加える行為をさします。
上司が出来の悪い部下に対して、丸めたメモ用紙を投げつけたり、書類で頭を叩いたりする行為も、パワハラに該当します。
企業で多発するパワハラの解説と具体的な事例
パワーハラスメントとは、会社内で権力や立場が優位な者が弱い立場の人を虐待する行為。配置換えなどがきっかけで立場が逆転すると、被害者から加害者になりうる可能性があります。
パワハラについて紹介しています。
職務や立場を利用した職場内で起きる陰湿な嫌がらせ行為
パワーハラスメントは近年増えてきた職場内での嫌がらせやいじめです。
法令上では明確な定義がありませんが、一般的には「職務上の地位や職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」をさします。
大きく分けると、使用者が特定の人間を会社から排除する「退職強要型」と、上司・同僚とのトラブルによる「人間関係型」の2つに分類されます。
暴力を加えて身体に危害を加える行為
上司など力のある者が、部下を叩いたり、殴ったり、蹴ったりして、身体に危害を加える行為をさします。
上司が出来の悪い部下に対して、丸めたメモ用紙を投げつけたり、書類で頭を叩いたりする行為も、パワハラに該当します。
蹴る真似事をして部下をいじめる
男子社員は部長の前で課長から跳び蹴りのまねや、顔すれすれに殴るまねを、幾度と受けた。
行き過ぎた教育もパワハラに
就業規則に違反した職員は上司から注意を受ける。就業規則を書き写す教育訓練を命じられた。
暴言を吐いて火傷を負わせる
部下が課長代理に話かけると、「早く消えろ」などといって、火のついたタバコを体にあてた。
投げつけた備品が身体にあたる
会話の練習中に、雇用先の従業員が丸めた販促用のポスターとクリップボードを使って頭を殴打した。
暴言を吐いて椅子を蹴る
備品担当の派遣社員は、派遣元のプリンターの不具合で「謝れ」といいがかりをつけられて椅子を蹴られた。
罵りから誹謗中傷まで行き過ぎた言葉の暴力
罵声を浴びせる、侮辱する、暴言を吐くなどの、精神的な苦痛を与える言葉の暴力行為です。
「ばか」「のろま」「辞めろ」「給料泥棒」といって人前で馬鹿にしたり、「仕事が終わるまで帰るな」と脅迫したり、あるいは「〇〇は不倫している」といった誹謗中傷する言動などがあります。
筋違いの言いがかりをつける
先輩社員から、「お前が入社したからM部長がリストラされるんだ」と、理不尽な言いがかりをつけられた。
全員の前で侮辱したことを言う
本社の懇親会で仲人を務めた本部長から「何をやらしてもアカン」といわれ、それを苦にして翌日自殺した。
叱責してプレッシャーをかける
支社長や所長から「マネージャーが務まると思っているのか。いつ降りても構わない」などと叱責された。
中絶や退職をすすめる
園長に妊娠を告げると、幼稚園教諭として無責任であると非難され、中絶や退職を勧められた。
拡声器で罵る名誉棄損行為
主任から名誉棄損行為を受ける。拡声器で「税金泥棒、辞めちゃえ。恥を知れ」と退職を促された。
過大・過少評価や社内での孤立、個人の侵害もパワハラ
身体的な攻撃、精神的な攻撃は、典型的なパワハラの元型です。
厚生労働省の「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議」の報告書には、身体的な攻撃、精神的な攻撃に加えて、次の4つの元型が挙げられています。
嫉妬が原因で配置転換
従業員から嫉妬され会社に不正行為をしていると訴えられる。事情聴取を受けて他部門に配置転換となり自殺する。
外部への告発の報復に不当な異動
会社に法令違反の疑いがあり、マスコミに告発。その報復として人事異動で不当な扱いを受ける。
不当処分を訴えて社内で孤立
事業部廃止に伴い解雇されるが、それを不当として会社と争う。資料置き場に席替えをされて退職を促された。
承知の上でシンナーをかがせる
シンナーなどでアナキラーショックを起こすことを知っていながら、課長は部下に対してシンナーをかがせた。
嫌がらせメールを一斉送信
勤務時間中、女性社員4名がIPメッセンジャーを使い、男性社員の同期に対して彼の悪口メールを送信した。
明確な定義がない責任があいまいなパワハラ
職場におけるパワハラが表面化し、企業でも対策を講じるようになりましたが、パワハラによるトラブルが増加の一途をたどっています。
男女雇用機会均等法のように、パワハラを禁止する明確な法律がないのが現状です。
パワハラは加害者だけの責任だと思われがちですが、実は企業にも使用者責任や債務不履行責任が問われることがあります。
パワハラが発生しない会社作りは弁護士と共に
パワハラを発生させないためには、まず企業法務の強化が重要です。企業としての対応を明確にすることで、トラブルを未然に防げます。そのために重要なのは、法律の専門家である弁護士の存在。です。
顧問弁護士をつけるのが一般的ですが、まずは弁護士への無料相談サービスなどを活用し、対処をしていくようにしましょう。
企業に求められるパワハラ予防・解決策
企業が取るべき対策には、パワハラを起こさない「予防策」と、万が一、起きた場合の「解決策」の両面を考える必要があります。
平成24年に厚生労働省で行った「円卓会議ワーキング・グループ報告」では、パワハラ予防・解決策として、下記の7項目を上げています。
パワハラ予防対策
パワハラ解決策
陰湿なパワハラは過労死やうつ病の引き金に
精神的な攻撃や身体的な攻撃など、パワハラが陰湿化したり、長期にわたると、被害者を追い詰めて、うつなどの精神的疾患の発症や、過労死になる事例もあります。
部下の中傷が発端となって会社の事情聴取を受て降格処分を受けた料理長は、精神的に追い詰められてうつ病を発症して自殺をしました。遺族の訴えにより、労災として認定を受けます。
この事例の通り、パワハラが職場で起こり、それが原因でうつ病を発症すると、労災の対象になることがあります。
根深いパワハラで企業に賠償責任が問われる
パワハラは、職場全体に悪影響を及ぼすだけでなく、企業の社会的な評価も下がります。加害者から賠償責任を問われると訴訟や裁判になり、賠償責任金を支払うケースが少なくありません。