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損害賠償責任保険の補償範囲
台風

管理不備の施設における台風の影響・リスク

管理不備のテナント等が台風に襲われ、他者に被害を与えてしまった場合、管理会社は被害の賠償責任を負う可能性があります。以下、具体的な事故例や企業責任などについて詳しく解説します。

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管理不備の施設が台風で他者に被害をもたらしたときの責任とは

台風による被害は、通常、予見が不可能です。よって、たとえば台風によって社屋の屋根が飛ばされて他者に被害を与えた場合、その責任の有無については議論の余地があります。ただし、被害の元凶となった施設等に管理不備が認められた場合には、議論の余地がほとんどありません。施設を管理する会社は、被害者に対して損害賠償を課せられることになるでしょう。

管理不備の施設等が台風の影響で損害賠償を命じられた事例

管理不備の施設における台風被害の事故例

台風による被害は、基本的に予見不可能です。しかしながら、被害の背景に管理不備が認められた場合には、テナント等の施設管理業者は、損害賠償責任を逃れることはできません。 以下、管理不備と台風とが重なった事故例、および裁判所の判断について見てみましょう。

テナント浸水事故

平成28年11月、台風の接近にともなう豪雨により、マンホール内の水かさが増して、水が地下テナント内に逆流。床が冠水して生じたテナントへの被害について、東京地裁は賃貸事業者に対して損害賠償を命じています。 判決では、過去3年の間に地下テナントで漏水や浸水事故が11回以上あったことを指摘し、賃貸事業者が十分な施設管理を行っていなかったと認定。事故のたびに賃貸事業者は応急措置を行っているものの、抜本的な対策を一切行っていなかったとして損害賠償責任を認めました。

街路樹倒木による事故

平成21年7月、国道を走行中の被害者の車両が、台風によって倒れた街路樹に直撃され破損。運転者もケガを負った事例です。 当該事例において熊本地裁は、街路樹を管理していた被告に対し損害賠償を命じました。 裁判所は、台風で倒れた樹木にベッコウタケが生え、かつ根元が腐敗していたことを指摘。倒木の恐れが十分に予見されていたにも関わらず、管理会社は必要な管理を怠ったとしています。 なお被告側は、「業務を委託した造園会社からの報告がない以上、ベッコウタケは生えていなかったと判断できる」と主張。これに対し裁判所は「県民の安全確保の責務を放棄したうえ、造園会社に責任転嫁を図ろうとするもので、不当極まりない」と強く断罪しています。

管理不備の施設等が台風で他者に被害をもたらしたときの企業責任とは

企業が負うべき責任について

管理不備の施設等が台風の影響で他者に被害を与えた場合、企業はどのような責任を負うことになるのでしょうか?代表的な2つの責任を見てみましょう。

  • 01

    損害賠償責任

    管理が十分に行き届いていたにも関わらず、不幸にも台風で他者に損害を与えた場合、原則として管理会社は賠償責任を問われることはありません。 ただし、管理不備と台風が重なって発生させた事故については、管理会社に賠償責任が生じます。 被害者に生じた身体・財物への損害のうち、裁判所が判断した案分に応じ、管理会社が被害を補償する形となります。

  • 02

    再発防止のための社会的責任

    被害の背景に管理不備が認められた場合、加害者は、事故の再発防止のための社会的責任を負うと考えるべきでしょう。 加えて、具体的かつ抜本的な再発防止策を講じない限り、賃貸するテナント等から、一部債務不履行を理由に提訴される可能性があります。

管理不備の施設が台風で他者に被害を与えたときにカバーできる賠償責任保険の範囲とは

管理不備のテナント等が台風の影響で他者に被害を与えた場合、管理会社は、施設賠償責任保険による補償を受けることができます。補償の範囲は、一般に以下の通りです。

  1. ①法律上の損害賠償金
  2. ②賠償責任に関する訴訟費用・弁護士費用等の争訟費用
  3. ③求償権の保全・行使等の損害防止軽減費用
  4. ④事故発生時の応急手当等の緊急措置費用
  5. ⑤弊社の要求に伴う協力費用

なお一般に、施設賠償責任保険は、法人が加入している火災保険とは別途で契約するもの。火災保険の特約として加入するのが一般的です。今一度加入中の保険を確認し、施設賠償責任保険が含まれているかどうかを確認してみるようにしましょう。

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