経営者のための事業リスクとその事例 » 経営の幅が拡がる、賠償責任保険の補償範囲 » 中退共の掛金など損金として算入が認められるものとは
中退共のメリットとは?

中小企業のための3つの共済

「中小企業退職金共済(中退共)」「小規模企業共済」「中小企業倒産防止共済」、これら3つは中小企業のための共済制度です。この3つの共済の掛金は、損金として算入できる対象となります。

中小企業退職金共済(中退共)

中退共は、従業員の退職金を積み立てるために国が設けた共済金制度です。原則として従業員全員が加入することになります。掛金は月額5,000円~3万円の間で16通りの中から選ぶことができ、事業主が納付することになっています。掛金は全額損金として計上できるほか、国による助成制度があるなどのメリットもあります。ただし経営者は加入対象外です。

小規模企業共済

中退共が従業員のための退職金共済制度であるのに対し、小規模企業共済は経営者のための退職金制度となっています。掛金の最大84万円までの金額を損金として算入することが可能。個人に対して所得税が課税されず、共済金(退職金)を受け取る際に一時金もしくは年金のいずれかを選択できるため、加入者本人にとっても節税メリットがあります。

中小企業倒産防止共済

中小企業倒産防止共済は、いわゆる連鎖倒産を防ぐための共済です。年間の掛金から240万円、累計で800万円までの全額を損金として算入でき、債権回収ができなくなった場合には払込した掛金の10倍(8,000万円が上限)までの共済金貸付を受けられます。また、40ヶ月(3年4ヶ月)以上の加入期間があれば、解約時には掛金全額が返戻されるため、税負担を軽くしながらいざというときに備えることができる制度です。

法人保険

民間の保険会社から販売されている法人向けの生命保険の中にも、払込保険料を損金として算入できるものがあります。ただし、経理処理上、払込保険料のうち2分の1もしくは3分の1しか経費として認められない商品もあるため、全額損金として算入したい場合には注意が必要です。

全額損金として算入できる法人保険に「全額損金定期保険」があります。この保険には積み立て機能があり、支払う保険料を損金に参入することや、解約返戻金を受け取って会社の運転資金にあてることで、赤字になるリスクを削減することを目的に利用されるケースが多くなっています。通常の生命保険よりも手厚い保証を受けられる商品もあるため、経営者に万が一のことがあった場合に起こりうる経営危機を回避するための備えとしても有効と考えられます。

従業員の給与

会社組織を支える従業員の給与は人件費として認められます。日ごろの給与だけではなく、ボーナスも経費になります。そのため、利益が多くなった年に、従業員への労いの気持ちを込めて臨時ボーナスを支払うことは、節税の観点からも有効な対策方法といえます。従業員のモチベーションも上がるため、双方にとってメリットがあるといえるでしょう。

決算期に法人税を節税する目的でボーナスを支給する場合は、「決算賞与」を支給しましょう。決算期末までに支給する賞与額を従業員に通知する必要がありますが、決算から1ヶ月以内に決算賞与の支給を行うことで、全額損金として算入できます。従業員への通知を決算期末までに行っていれば、実際の支給は次年度に入ってから1ヶ月以内に行えばいいため、利益が出た年の期末に節税対策として急遽実践する場合も少なくありません。

ただし、役員賞与については、「利益分配による利益処分」と判断されてしまうため、損金算入できないので注意が必要です。

役員の報酬や退職金は制限付きで損金として認められる

役員賞与は損金として算入できませんが、役員報酬や役員退職金は「認められる範囲」という制限付きで損金に算入できます。制限付きである理由としては、あまりに過大な報酬について全額損金として認めてしまうと、悪用される可能性が考えられるためです。しかし、認められる範囲といっても実際に法律で決定されているものではなく、判断基準が難しいのが現状です。

役員退職金は

退職時時点の月額役員報酬×在任年数×功績倍率

といった形式で求められるのが一般的です。

退職金として支払われることで、受け取る役員個人が支払う税金にも優遇措置があるため、受け取る側のメリットも大きいでしょう。

また、役員報酬については、会社経営上、役員の仕事に対し支払うべき対価であるため、「利益分配」という判断はされません。従業員の給与と同様に人件費として扱うことができます。

交際費

交際費は会社の規模によって損金に算入できます。具体的には「資本金もしくは出資金の額が1億円以下の企業」であれば損金としての算入が可能。中小企業の場合はこれに該当するケースが多いでしょう。交際費は「仕事上で付き合いがある人へのおもてなし(接待交際費)」であることが求められるため、自分や家族との食費などは交際費としては認められません。

接待交際費は、「年間800万円まで」もしくは「飲食に関わる費用の50%」までが経費として認められる範囲です。つまり、年間で接待による飲食代が1,600万円を超える場合には、飲食費の50%を採択することでより多くの費用を損金算入できることになります。

また、企業の規模に関係なく、1人当たり5,000円までの金額が交際費から除かれます。この場合は「会議費」として損金算入します。

(国税庁「平成26年度 交際費等の損金不算入制度の改正のあらまし」https://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/hojin/kousaihi.pdf)

会社経営のリスクをオンラインで弁護士に相談できる企業法務サポートサービス登録無料