損害賠償責任保険の補償範囲

貨物保険の補償範囲

輸送中の貨物の損害を補償する保険

主に海外との取引において、輸送中の貨物に万が一の損害が生じた場合には、これを補償するのが貨物保険。四方を海に囲まれた日本は、国外との取引も活発です。その分、輸送中における貨物の損害のリスクも高いと言えるでしょう。輸出入に関わる経営者は、貨物保険に関する基本知識をしっかりと理解しておいてください。

貨物保険とは?

貨物保険とは、一般に「貨物・運送の保険」と総称される一連の保険のこと。貨物の輸送における財物等への損害を補償する保険です。

輸送の対象は、国内外における様々な貨物の輸送。陸路での輸送のみならず、海上での輸送、航空機での輸送なども含まれます。

ただし、様々な輸送手段の中でも、想定されるリスクが非常に大きいのが海上輸送。海外への輸出、海外からの輸入において万が一の事故が遭った場合、損害の額は非常に大きなものとなります。そのため貨物保険と言えば、海外との取引にかけられる保険との認識が一般的です。

企業の規模に関わらず、海外との取引を行なっている企業は国内にたくさん存在します。よって輸出入にかかわる業種を営む経営者は、貨物保険に関する基本的な知識を理解しておいたほうが良いでしょう。

以下、具体的な貨物保険の例をご紹介します。

■主な貨物保険

  • ・外航貨物海上保険…日本と外国との貨物輸送における被害を補償
  • ・内航貨物海上保険…国内での海上輸送における被害を補償
  • ・内航貨物海上保険…国内での陸上輸送にともなう貨物の被害を補償
  • ・航空運送保険…航空機の輸送にともなう貨物の損害を補償

他にも様々な種類の貨物保険が用意されているので、それぞれの内容を比較し、当該輸送において最適な保険商品を選ぶようにしましょう。

なお貨物保険は、一般に海上を経由した輸出入において利用されている保険なので、以下では「外航貨物海上保険」を前提に解説していきます。

貨物保険の基本的な補償内容

貨物保険は、主に海外との取引における貨物の損害を補償する保険です。輸送中に生じうる多くのリスクをカバーしているため、輸出入に関わる業者の多くが、万が一の事故に備えて貨物保険に加入しています。

基本的には、次のような事故による貨物の損害について補償します。

  • ・輸送船の沈没・座礁・火災
  • ・輸送船への海水や雨水の浸水
  • ・輸送船への貨物の積み下ろしに生じる不測の事故

この3点の補償を基本とし、他にも様々な補償が用意されています。以下で、より具体的な補償内容を見てみましょう。

貨物保険における3種類の基本補償

貨物保険補償内容について、協会貨物約款(ICC)では3つの基本条件を用意しています。契約者は、これら3つのうち、いずれか1つを選んで基本補償とし、加えて特約を付けるかどうかを検討します。

■協会貨物約款(ICC)が用意している3つの基本条件

※「〇」は補償あり、「×」は補償なし

危険の具体例 ICC(A) ICC(B) ICC(C)
火災・爆発
船舶または艀の沈没・座礁
陸上輸送用具の転覆・脱線
輸送用具の衝突
本船または艀への積込・荷卸中の落下による梱包1個ごとの全損 ×
海・湖・河川の水の輸送用具・保管場所への浸入 ×
地震・噴火・雷 ×
雨・雪等 による濡れ × ×
破損・まがり・へこみ、擦損・かぎ損 × ×
盗難・抜荷・不着 × ×
外的な要因をともなう漏出・不足 × ×
共同海損・救助料、投荷
波ざらい ×
[1]

海外への貨物を輸送するにあたり、地域情勢によってその危険度は大きく異なります。

契約者は、当該輸送において必要と想定される補償を入れ、不要と想定される補償を外し、上記のICC(A)、ICC(B)、ICC(C)の3種類の基本補償から1つを選んで契約することになります。

戦争やストライキも補償の対象となるのか?

一般的な損害保険では、戦争やストライキによる財物の損害を補償していません。しかしながら、外航貨物海上保険においては、特約を付けることによって戦争・ストライキによる財物の損害を補償することができます。

ただし、「戦争」による貨物の被害については、荷物が海上にある場合に限ります。貨物が陸上で移動中に戦争の被害に遭ったとしても、その被害は補償されない点を理解しておいてください。

[2]

貨物保険の保険期間

一般的な損害保険では保険期間が設けられており、この保険期間において事故が生じた場合には、保険金が支払われる仕組みになっています。

一方で貨物保険には、基本的には決まった保険期間と言う考え方はありません。決まった期間ではなく、貨物を運んでいる間を補償します。この間の定義について、東京海上日動では次のように説明しています。

「貨物が保険証券記載の仕出地の倉庫・その他の保管場所において、輸送の目的をもって初めて動かされた時に開始し、保険証券記載の仕向地にある最終倉庫・その他の保管場所で荷卸しが完了した時に終了する」

簡単に言えば、貨物の積み込みが始まった瞬間から、最終保管場所での貨物の荷下ろしが終わった瞬間までを補償する、ということです。

ただし、最終保管場所に移動する前に、仕分けや配送のため倉庫へ一時的することもあるでしょう。この場合、一時的な保管が一定期間(30日、60日など)を過ぎると、保証期間が自動的に終了するのが一般的です。

[2]

海外との取引がある業者には貨物保険が必須

日本と海外の間を輸送中に、トラブルに巻き込まれてしまい貨物が損害を受けた場合、会社は賠償責任を負わなければいけません。例えば車の輸送中に船が沈没・火災などで損害が発生した場合、膨大な金額の損害賠償請求をされることも考えられます。貨物に関して補償してもらえるのが貨物保険なのです。そのため海外との取引を行なっている業者は、貨物保険に加入していて損することはありません。

  • 01

    保管時も対象になる?

    また、貨物保険は海上の船舶だけが対象となっているわけではなく、条件によっては航空・陸上でも補償してもらうことが可能です。国内への輸送に比べると海外は運送する時間が長くなります。その分運搬している貨物に対するリスクが大きくなると言えるでしょう。輸送中の保管している貨物に対する損害をカバーできる貨物保険は、貿易・物流の事業を経営している方にとって、安心を確保するための心強い保険だと言えます。

  • 02

    海外取引には一般的な保険

    海外との取引を行なっている業者の間では、貨物保険に加入することが一般的です。海外と取引している会社で、まだ貨物保険に入っていない場合は、すぐに加入するようにしましょう。

    貨物保険には、海外との取引がある度に契約を結ぶ「個別予定保険」と一定期間内すべての貨物の保証をしてくれる「包括予定保険」があります。

    海外との取引が多い場合は、「包括予定保険」に入る会社も多数ありますが、経営方針は会社によって異なるので、専門家に相談してどの保険に入るか決めると良いでしょう。

  • 03

    あらゆるシーンを想定した選択を

    貿易・物流会社の経営には貨物だけではなく、さまざまリスクがつきものです。例えば、フォークリフトで貨物の荷下ろしの際に、他人にぶつかってケガさせてしまった場合、損害賠償金を支払ないといけません。海外取引での事故だけでなく、作業中の作業員や一般人のケガ・商品の破損などのリスクを最小限に抑えるために、貨物保険と併せて複数の保険商品を組み合わせた包括的な保険商品にも加入しておくと、より安全に会社を経営することができるでしょう。

参考文献

[1]三井住友海上「外航貨物海上保険」デジタルパンフレット

URL:https://www.ms-ins.com/pdf/business/cargo/gaiko.pdf

[2]東京海上日動公式サイト「外構貨物海上保険-補償内容」

URL:https://www.tokiomarine-nichido.co.jp/hojin/marine_site/kamotsu/gaiko/hosho.html
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