リスクマネジメントの基本的な進め方
リスクマネジメントとは、企業を取り巻くさまざまなリスクに対して、最小のコストで予防または適切な処理を行うことで、被害損失を最小限に抑えるようコントロールすることです。
リスクマネジメントの実施で企業を守る
企業を取り巻くあらゆるリスクから会社を守るために、リスクマネジメントを実施しているところも多くなっています。具体的に、どのようにして実施すればよいのでしょうか。有効な危機管理対策を打つために、その方法を紹介しましょう。
リスクマネジメントの基本的な進め方
リスクマネジメントとは、企業を取り巻くさまざまなリスクに対して、最小のコストで予防または適切な処理を行うことで、被害損失を最小限に抑えるようコントロールすることです。
起こり得るリスクを具体的に洗い出す
リスクマネジメントを進めるうえで最初にやるべきことは、企業を取り巻くさまざまなリスクを洗い出すことです。
事故や災害、火災などで建物や設備を失うリスク、役員や社員の不祥事などで企業イメージを低下させるリスク、個人情報や取引先の機密情報を漏えいさせるリスクなど、売上減少や経営悪化につながる要因は実に多く存在します。
また、業務中における従業員のケガや事故といった労働災害、取引先や株主からの訴訟(株主代表訴訟など)も、企業経営に与えるダメージは大きいでしょう。
こうしたリスクを具体的に特定することにより、一つ一つの項目に対策が打てるようになります。
損失額や影響(リスク拡大)×発生確率で評価
リスクを洗い出したら、次はその大きさでランク付け(評価)をしていきます。
ここでいう「リスクの大きさ」とは、影響や損失額だけではなく、そのリスクが発生する確率も含めます。損失が小さくても発生件数が多ければリスクは大きくなりますし、逆に損失が大きくても発生件数が極めて少なければリスクは小さいと考えられます。
また、影響という面では従業員の健康や生命、企業イメージなど多方面に目を向けて考える必要があります。リスクが発生した後も、さらに拡大していく可能性も考慮しなければいけません。
こうした評価作業で、リスクが大きいと判断された項目から対策を練っていくわけですが、小さいと判断されたものも経過観察していくことが重要です。
リスクコントロールとリスクファイナンス
リスクの大きさを評価したら、「リスクコントロール」と「リスクファイナンス」という方法で、損失を最小限にする対策をしていきます。
リスクコントロールとは、リスクが発生しないよう対策することです。例えば、反社会勢力とのかかわりを持たないなどリスクの根源を断つことも一つでしょうし、どうしても起きてしまうリスクについては最小限に留められるよう対策を考えることもリスクコントロールです。
それでも、予期せぬリスクは生じるでしょう。そこで、もう一つのリスクファイナンスについて検討していきます。リスクファイナンスとは、文字通りお金のこと。積立金や引当金、内部留保など自社で確保したり、基金や各種保険など外部から支援してもらったりして、万が一の事態に備えるのです。
任意の労災保険や賠償責任保険への加入も検討すべき
リスクファイナンスの一つに、任意の労災保険や賠償責任保険に加入するという方法があります。
労災保険は、労災事故に対する保険。建設関係や製造業など、従業員のケガや病気をするリスクが高い業界はもちろん、残業の多いサービス業でも心の病気の治療など保険会社が補償します。
一方、賠償責任保険は会社の賠償責任や従業員のリスク、使用者責任などに関する保険です。
賠償責任保険には、さまざまな補償内容があります。一例に挙げると、その施設や建物を保有または管理する会社の不備によって、利用者がケガをした場合、保険会社が代わりに損害賠償額を補償してくれます。
また、自社製品の不良が原因で取引先などから損害賠償請求をされたときの補償や、企業イメージ低下にともなう経営悪化に対する補償など、幅広いリスクに手厚く対応します。
どんな企業でも、事業を行ううえでリスクは必ず付いて回ります。そんなリスクに備えて、顧問弁護士を雇うなどリスク対策をしておくことも重要ではないでしょうか。
経営リスクをコントロールする方法はいくつかあります。既に実践されていることもあるかもしれませんが、改めてリスクコントロールの手法を確認しておくことで、実際にリスクと向き合う際、どのような行動を取るべきかの指標になるはずです。
経営リスクコントロール:回避
リスクの原因を取り除くことを意味するもので、「リスク破棄」と呼ばれることもあります。
新しく行動を起こす際、リターンだけでなくリスクも考慮する必要があります。ですが、得られるリターンとリスクを天秤にかけ、成功よりも失敗時のダメージを考え、事業そのものから撤退するケースもあるはずです。
事業を行うからこそリスクに直面する可能性があるので、事業そのものを行わなければリスクを負う必要がない、つまりは回避できるという考え方です。根本的な対策であり、実行をためらう手法といえますが、リターンを計算してリスクが勝ちすぎる時は検討したい手法といえるでしょう。
経営リスクコントロール:損害防止
リスク発生時の損害を防止するための対策で、基本的な手法は保険の導入となります。保険に加入しておけば、仮に何らかのリスクが起きたとしても、ダメージを軽減できます。
また、実際の保険だけではなく、保険「的」な考え方も損害防止になります。「いざ」や「もしも」を考えることがこれに当たるので、損害防止は多くの企業において基本とされているものです。安全を確保するからこそ、さまざまな事業へ踏み込みやすくなる手法といえるでしょう。
経営リスクコントロール:損害低減
リスク発生の可能性を下げたり、あるいはリスクの影響を小さくするためのものです。
人的な話でいえば、会社の中核となる人達は同じ飛行機に乗らないというのもあります。墜落事故などのアクシデントに備え、会社のかじ取りをする人間がいなくなるリスクを割けるためです。
設備でも稼働が止まらないようメンテナンスを行い、設備そのものが異常をきたさないよう工夫したり、あるいはもう一つ施設を作ることで生産量を分散したりというものがあります。問題が起きた際のダメージを軽減するのを考えての行動です。
経営リスクコントロール:分離・分散
リスクの単位をより細かくするため手法です。物流であれば一台で運ぶ荷物を減らし、複数で運ぶようにすれば、仮に事故・アクシデントが起きてしまった際、破損する荷物は少なくなります。
取引先が一社の場合、その一社が倒産してしまったら取引先を「全て」失うことになりますが、一社当たりの取引量を減らしても、取引先を増やしておけばリスクが発生した際に、「全て失う」ことにはなりません。会社の経営で、特に大事な考えとも言えます。リスクに備え、損失時の影響を減少させることが目的です。