経営者のための事業リスクとその事例 » 経営の幅が拡がる、賠償責任保険の補償範囲 » 舶を所有する経営者は必須! PI保険(船主責任保険)とは
PI保険(船主責任保険)の補償範囲
PI保険イメージ

PI保険(船主責任保険)の補償範囲とは

船舶に関わる損害賠償・費用を補償する保険

船舶の航行において、他の船や港湾、漁場などに損害を与えた際、この損害賠償・費用を補償するのがPI保険(船主責任保険)。他の一般的な船舶保険では保障されない内容も多く含まれているので、船舶事業に従事する経営者は加入を検討すべき保険となるでしょう。

PI保険(船主責任保険)とは

PI保険(船主責任保険)とは、船舶の航行によって発生する恐れのある様々なリスクを保障する保険です。より具体的に言えば、自分の船に生じた損害を補償する保険ではなく、他人や他人のモノに与えた損害を補償する保険。言い換えれば、損害賠償責任保険の一種ということになります。

自動車の運転と同様に、船舶の航行においても、常に他人や他人のモノに損害を与えるリスクが伴っています。船同士の衝突による乗組員の死傷や相手の船の損傷、油漏れによって与えた漁場への被害、積んでいた他人の荷物への損害など、船舶の事故による損害賠償の発生リスクは常にあります。社用車を所有するオーナーが自動車保険に加入することと同様、船舶を所有する経営者もまた、PI保険は加入必須の保険と言うことができるでしょう。

PI保険の基本的な補償内容や適用例

PI保険の保障内容や適応例について、大きく6つに分けてご紹介します。

■船舶と衝突した際の賠償責任と費用

船舶同士の衝突が生じた際には、自動車事故と同様に、加害者は被害者に対して損害賠償を負うことになります。また、相手方の船舶の撤去費用など、様々な費用も発生します。PI保険は、これら賠償責任や費用を補償します。

【適応例】

  • ・衝突によって、相手方の船の乗組員に死傷者が出た
  • ・衝突によって、相手方の船に積んであった財物が損傷した
  • ・衝突による油漏れで、漁場の海産物に被害を与えた

油漏れに起因する損害賠償については、保険会社によって補償されないケースもあるため、契約の際には補償内容をよく確認するようにしてください。

■船舶以外のものに損害を与えた場合の賠償責任と費用

船舶における事故は、必ずしも船舶同士の衝突だけとは限りません。自動車が店舗に突っ込む事故と同様に、船舶が港湾設備などに接触して損害を与える事故もあります。PI保険では、これら船舶以外のものに与えた損害についても補償の対象としています。

【適応例】

  • ・船舶が港湾のクレーンに接触して損害を与えた
  • ・船舶が海中ケーブルを切断した
  • ・船舶が定置網に侵入してしまい損害を与えた

■船舶が直接人に与えた場合の賠償責任と費用

船舶が直接人の身体に損害を与えた場合、PI保険はその事故に関わる賠償責任を費用を補償します。船舶の積み荷の最中に陸上で働く作業員がケガをしたり、漁船が海水浴客と接触したりする事故も報告されているため、船舶を扱う業者は注意が必要です。

【適応例】

  • ・陸上作業員が船舶から荷をおろしていた際、荷物が落下して作業員がケガをした
  • ・船舶とダイバーが接触し、ダイバーがケガを負った

■座礁などによる船舶の片付け費用

座礁などによって船が全損し航行不能となった場合、海上保安庁や市区町村長などから残骸の撤去命令を受けることがあります。PI保険は、その際の船舶の残骸の片付け費用を補償します。

■衝突以外の原因による油濁事故

油漏れは、船舶同士の衝突以外の原因でも発生することがあります。座礁による船舶の破損や、給油ミス、バブル操作ミスなどです。PI保険では、これら衝突以外の原因による油濁事故の損害についても補償します(保険会社によっては補償しないケースもあるので要確認)。大型船などから油漏れが発生した場合には、近海の海産物に大打撃を与えることは必至。その損害額は、想像だにつきません。

■輸送中の他人の財物に対する損害

他人の財物を船舶で輸送中、何らかの理由でその財物に損害が発生してしまった場合には、持ち主に対して損害賠償責任を負わなければなりません。

かつては、船舶で輸送中の貨物に損害が生じた場合、たとえ船主の過失による損害であったとしても、その損害を補償するのは荷主の貨物保険でした。しかしながら法律では、業界におけるこの暗黙の習慣を覆し、貨物の損傷を船主が補償するものと判断しました。

補償が適応されないケース

PI保険は、船舶におけるすべての賠償責任・費用を補償するものではありません。参考までに、東京海上日動のPI保険における「適応外」のケースについて確認してみましょう。

■被保険者の使用人、および下請負人(その使用人を含む)が死傷した場合、または疾病にかかった場合、その損害賠償について補償しません。これらの者が所有する財物に損害があった場合でも同様です。

■船客(運賃・料金を支払って被保険船舶に乗船している者)に生じた損害賠償責任は、補償しません。

■油や有害液体物質、廃棄物などの流出・排出によって生じた賠償責任については、原因のいかんを問わず、原則として補償しません。

■金銭や地金、貴金属、宝石、債券などに生じた損害については、これを補償しません。

■損害賠償に関する特約を設定している場合、その特約で加重された賠償額については補償しません。

東京海上日動のPI保険では、他にもいつくかの適応外となるケースがあります。契約を検討する際には、約款を十分に確認するようにしましょう。

他の船舶保険にはない保障もあり

四方を海に囲まれ、貿易立国として発展してきた日本の海上保険は、貿易取引や海運を支えるインフラの一つとして重要な役割を担ってきました。

外航船舶は、2005年からPI保険の加入が義務付けられています。保険に加入していない船舶は入港が禁止されているほど。PI保険の重要性が、ますます増している証拠に他なりません。

海上賠償責任保険の世界共通の通称がPI保険です。非営利団体であるP&Iクラブが運営しており、組合員となることで保険への加入ができます。選手や運航受託者、船舶配乗者など、船舶に関わる職種であれば加入資格があります。

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    Protection(保護)とIndemnity(補償)を担う海上保険

    PI保険とは、Protection(保護)とIndemnity(補償)の頭文字を取った略称です。

    「保護」という意味を持つProtectionは、船舶の所有者・運航者や雇用主として負うべき責任を補償します。 船舶所有者・運航者として負うべき「油流出などの汚染損害」「陸上・海上施設の損傷」といった責任と、雇用者として負うべき「船員の死亡・傷病」などの責任を指します。

    「補償」という意味を持つIndemnityは、船舶の積荷や船員・船客以外の人に関する損害を補償します。主に積荷に与えた損害、運送者としての責任を補償します。

    PI保険は、いわば海上の賠償責任保険です。船舶の運航や使用、管理にともなって、法律上の賠償責を負ったり、費用を支払ったりすることで被る損害を填補します。

  • 02

    補償範囲の違いも要確認

    機械保険は火災保険とは違い、火災による損害の補償の機能が無いのが特徴です。火災保険は火災や風災、水災など広い範囲で損害を補償してくれます。高額な機械が多く、機械保険の加入を考えている場合には、火災保険と保険内容が被っていないかを必ず確認しましょう。 火災保険は商品内容によって、火災手前のショートやスパークでも保証範囲に含まれている場合があるため、余計な経費となってしまうことも十分にあり得るからです。機械設備の故障など、補償範囲が明確に違う保険であれば、把握もしやすいでしょう。

  • 03

    事故防止のための助言やセミナーも行なっている

    P&I保険を運営する非営利団体・P&Iクラブが提供するサービスは、リスクの填補だけではありません。クレーム処理や保険上の発行、事故防止への助言・セミナーなども行っており、単なるリスク管理に留まらないさまざまな恩恵を受けられるのもP&I保険の特徴です。
    加入条件はありますが、船舶に関する職種であれば入れるようになっており、既存の船舶保険や貨物保険ではカバーできないさまざまな補償やサービスが受けられます。起こってしまったリスクを最小限に抑えるだけでなく、リスクを回避するという観点でも、船舶に関わる事業に従事している経営者はぜひ加入しておきたい保険です。

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