【社内リスク】訴訟が急増中!使用者責任の事例とは

【番外】要注意!こんなケースでも使用者責任になる実際にあった訴訟・判例

事業者としての使用者責任と実際にあった判例

事業主には様々な法的責任があり、従業員が第三者に損害をあたえると、被害者から賠償責任を請求される可能性があります。ここでは使用者責任を問われた訴訟や判例について紹介しています。

企業の使用者としての法的責任とは

企業に問われる使用者責任と安全配置義務

企業には労働者の使用者としての法的責任があります。

  • 使用者責任:従業員のトラブルで第三者に危害を加えた場合、使用者責任が問われます。
  • 安全配置義務:従業員が安全に働ける環境を整備する安全配置義務があります。それを怠ったために従業員間にトラブル等がおきると、賠償責任が請求される可能性があります。
  • 従業員に対する安全配慮義務

    従業員の安全と心身の健康を守る安全配慮義務

    安全配置義務とは、労働契約法第5条に定められている事項で、使用者に対して労働者の生命や身体の安全を守り、健康に働くための必要な配慮を義務付けています。

    生命と身体の安全には、心(メンタル面)の健康も含み、職場環境や労働時間、人間関係などを改善して、安全に働ける環境を整える必要があります。就業中の事故による怪我や、過重労働によるうつ病など、安全配置義務違反とみなされる可能性があります。

  • 従業員の不法行為に対する使用者責任

    広範囲にわたる従業員の不法行為に対する使用者責任

    不法行為とは、従業員の行為によって、第三者の権利や利害を侵害することです。従業員が業務に付随して不法行為を起こすと、事業主の使用者責任が問われて、使用者から賠償責任を請求されます。従業員の不法行為には、業務中の事故や交通事故、傷害、役職を悪用した詐欺や窃盗、横領など、広範囲にわたります。また受動喫煙で第三者の健康を害する行為も、不法行為とみなされます。

使用者責任で訴訟になる前に弁護士へ相談

使用者責任で訴訟を起こされない環境づくりは企業法務のプロと共に

以前までは表面化しづらかった使用者責任ですが、年々その注目度は上がっており、訴訟に発展するケースも増加傾向にあります。その中で企業に求められているのは、使用者責任に関する訴訟を起こされない環境づくりができているかという点です。

「今までは問題なかった」というような些細な部分であっても、それを見過ごしておくことで取り返しのつかない事態に陥る可能性があります。常に企業法務へ詳しい弁護士への相談をできる環境をつくり、従業員からの訴えを受け止め、冷静に判断していくことが何よりも重要です。

顧問弁護士をつけるという手段もありますが、規模の小さな企業ではそれも難しい場合もあります。弁護士への無料相談サービスなどを活用し、対処をしていくようにしましょう。

実際にあった訴訟・判例

実際にあった使用者責任が問われた意外な判例

近年、受動喫煙や詐欺、傷害など、従業員が起こす不法行為が複雑になり、被害者から使用者責任を問われるケースが増えています。ここでは使用者責任を問われた以外な判例を紹介しています。

  • 企業が使用者責任を問われた意外なケース

    委託先が個人情報流出で使用者責任

    被告:A社  原告:A者の顧客Bさん  賠償額:3万5000円

    A社の顧客のBさんは個人情報が流出して、A社に対して賠償責任を請求。Web管理を委託していたC社の管理ミスが原因。裁判所は委託先の過失と判断して、A社に3万5000円の賠償責任金の支払いを命じた。

    従業員の詐欺横領に使用者責任

    被告::詐欺をした社員の勤務先証券会社  原告:被害者  賠償額:55万円

    証券会社の社員が、顧客に架空の投資を勧誘し、自分の口座に200万円振り込ませる詐欺を働いた。被害者は会社に対して賠償責任を請求。裁判所は使用者責任を認め、会社に55万円の支払いを命じた。

    利用者の怪我に使用者責任を追及

    被告:デイサービス  原告:トイレの介助を拒否した利用者の家族  賠償額:1800万円

    デイサービスでトイレの介助を拒否した利用者が、トイレに入り骨折した。利用者の家族は職員が義務を怠ったとして賠償責任を請求。裁判所は使用者責任を認め、1800万円の支払いを命じた。

    受動喫煙で事業主に使用者責任

    被告:勤務先の会社  原告:従業員  賠償額:700万円

    従業員Bは受動喫煙が原因で化学物質過敏症になる。診断書を提出して改善を求めるが解雇。分煙化後復職したが、再び症状が悪化。裁判所は使用者責任を認めて700万円の支払いを命じた。

    健康診断不通知で使用者責任

    被告:元勤務先の会社  原告:従業員の遺族  賠償額:300万円(慰謝料として)

    健康診断の結果を従業員に通知しなかったため、肺がんで死亡したとして、その遺族が会社に対して賠償責任を請求した。裁判では因果関係は認められないとしながらも、精神的苦痛を考慮して慰謝料300万円の支払いを命じた。

各保険会社の使用者責任に関する賠償責任保険概要

各保険会社の、使用者責任の賠償責任保険を一覧でご紹介します。

このページでは、「従業員が第三者に怪我を負わせたときの使用者責任」と「業務が原因で従業員がケガまたは疾病にかかったときの使用者責任」の2つの使用者責任を扱っています。

しかし「業務が原因で従業員が怪我または疾病にかかったときの使用者責任」は、第三者がどのような被害を受けるかによって保険の種類が変わります。一覧でご紹介するのは困難です。

このため一覧では「業務が原因で従業員が怪我または疾病にかかったときの使用者責任」のみをご紹介します。

保険会社と保険商材 主な補償内容 加入・契約方式
三井住友海上
【ビジネスJネクスト(業務災害補償保険)】

業務が原因で従業員等が怪我または疾病にかかったときの損害賠償責任や、訴訟費用等の補償 基本保障
東京海上日動火災保険
【業務災害総合保険 超Tプロテクション】

業務が原因で従業員等が怪我または疾病にかかったときの損害賠償責任や、訴訟費用等の補償 選択+組合せ
AIG損保(旧AIU保険)
【総合事業者保険(スマートプロテクト)】

業務が原因で従業員等が怪我または疾病にかかったときの損害賠償責任や、訴訟費用等の補償 基本保障
共栄火災
【業務災害補償保険(K-Biz)】

業務が原因で従業員等が怪我または疾病にかかったときの損害賠償責任や、訴訟費用等の補償 基本保障
損保ジャパン日本興亜
【労働災害総合保険 】

業務が原因で従業員等が怪我または疾病にかかったときの損害賠償責任や、訴訟費用等の補償 基本保障
あいおいニッセイ同和損保
【タフビズ業務災害補償保険】

業務が原因で従業員等が怪我または疾病にかかったときの損害賠償責任や、訴訟費用等の補償 選択+組合せ

使用者責任に備えるためには

従業員が軽い気持ちでおよんだ行為によって、企業は重い責任を問われてしまうこともあります。今回紹介したケースだけに限らず、従業員が意図せず行ったことで企業側に責任が認められてしまう事例も多くあるのです。雇用契約を結んでいる以上、雇用主は使用者責任の判断を下されてしまいますので、従業員の管理体制をしっかりとしておくことでこういった被害を未然に防がなくてはいけません。

しかし、大規模の企業ともなると、ひとりひとりを管理することは難しく、現実的には不可能でしょう。そのため、万が一の場合に備えるためにも賠償責任保険に加入しておくべきです。賠償金の補償を受けられる保険のため、従業員のミスにより企業に損害賠償を求められた時にも対応できます。事業を展開していると他のリスクも付随して生じてしまうことも考えられため、賠償責任保険に入って最悪の事態にも対処できるようにしておくことが望ましいです。

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