損害賠償責任保険の補償範囲

利益保険の補償内容とは

営業中断中に得られたであろう利益・かかった費用を補償

不測の事態によって企業活動が一時的にストップした際、その間に得られたであろう利益や、その間にかかってしまった費用について補償するのが利益保険。万が一、火災等によって事業活動がストップした場合、復旧までにかかる期間の長さによっては、経営自体に深刻なダメージをもたらすこともあります。業種に関わらず、どのような事業者も検討すべき保険でしょう。

利益保険とは

利益保険とは、火災や風災、盗難などによって工場や事務所の運営維持が不可能となった場合、復旧までの間にかかる人件費や、本来であれば得られてであろう利益などを補償する保険のことです。

どのような企業でも、思わぬアクシデントで一時的に営業の存続が不可能となるリスクがあります。

工場が火災で全焼してしまえば、工場を建て直すまでの間の生産活動はストップするでしょう。生産活動がストップしたとしても、工場再建後の再稼働に備え、経営者は従業員の給与を補償し続けなければなりません。

こうした思わぬアクシデントによる一時的な事業停止において、失われた利益や、かかった費用を補償するのが利益保険になります。

利益保険の基本的な補償内容と補償範囲

利益保険の補償内容・補償範囲は、次のような事故によって一定期間の営業が困難になった際、その間に得られたであろう「利益」や、将来的な売上高減少を防ぐために必要な「費用」について補償しています。

  • ・火災、落雷、破裂・爆発
  • ・風災、雹(ひょう)災、雪災
  • ・給排水設備等に生じた事故による水ぬれ
  • ・物体の落下、飛来、衝突等による事故
  • ・騒擾(じょう)等による集団行動
  • ・盗難
  • ・破損等、上記以外の偶然な事故

また、保険会社によっては、特約を付帯させることで、「電気的事故・機械的事故」や「水災」による被害を補償することも可能です。[1]

また、敷地外ユーティリティ設備の機能停止等によって生じた損害についても、復旧までの「利益」「費用」について補償します。なお、敷地外ユーティリティ―設備とは、電気事業者やガス事業者、水道供給事業者、電気通信事業者など、経営維持に欠かせないインフラ系事業者のことを言います。[2]

ところで、上記[1]の補償内容を見て、「一般的な火災保険に似ている」と感じた方も多いことでしょう。

確かに、一見、火災保険と利益保険はよく似ているのですが、その保証内容は大きく異なります。以下で、火災保険と利益保険との違いを区別しておきましょう。

火災保険と利益保険の違い

火災保険も利益保険も火災や風災、偶発的な事故等による被害額を補償している点においては共通しています。しかしながら、両者は補償内容がまったく異なるので、ここで両者の違いを明確に区別してください。

■火災保険の補償内容

火災保険が補償している対象は、火災や風災などによって生じた「建物」の損害金です。たとえば工場が火災に遭った際、火災保険を利用することで建物を再建することはできます。しかし、工場の焼失から再建までの間に失われる利益については、火災保険では補償されません。

■利益保険の補償内容

利益保険が補償している対象は、火災や風災などによって建物が損害を受けた際、その建物で生まれるはずだった「利益・費用」です。万が一工場が火災で全焼したとしても、工場の再稼働までに生まれるはずだった「利益」、および、人件費などの「費用」を補償するのが利益保険です。

以上のように、火災保険と利益保険とは、それぞれ補償内容がまったく異なります。両保険に加入しておくことで、会社の万が一に十分に備えておくようお勧めします。

利益保険における保険金額の計算方法

利益保険における保険金額は保険会社によって異なりますが、一般には「喪失利益」と「収益減少防止費用」を合算した金額が支払われることになります。

■喪失利益の計算方法

[計算式]収益減少額 × 約定補償率 = 喪失利益

約定補償率とは、利益保険の契約の際に保険会社と取り決める一定比率のこと。たとえば、収益減少額が1000万円、約定補償率が30%の場合の喪失利益は300万円となります。

■収益減少防止費用の計算方法

[計算式]収益減少を防止するためにかかった費用 × 約定補償率 ÷ 利益率

たとえば、収益減少を防止するためにかかった費用が1000万円、約定補償率が30%、利益率が40%の場合、収益減少防止費用は750万円となります。

なお約定補償率は、利益率の範囲内で契約者が設定することになります。

■保険金額(支払限度額)の計算では付保率を乗じる

通常、各保険会社では利益保険の保険金額(支払限度額)の設定において、付保率を乗じて計算します。

付保率とは、12ヶ月間の中で、被害が継続すると想定される期間のこと。復旧までの期間が6ヶ月かかると想定すれば、付保率は50%となります。

なお「付保率」は、利益保険の契約の際、契約者が設定することになります。

年間営業収益が20億円、約定補償率30%、付保率50%の場合、それぞれを乗じて保険金額(支払限度額)が3億円となります。

事故で失われるものは建物・財物だけではない

会社の建物や工場が、火災や地震などで被害に遭った際、真っ先に考えるのは建物の再建や財物の再購入にかかる費用でしょう。そのため、ほとんどの経営者は万が一の事故に備えて、建物・財物の損害を補償する「火災保険」に加入しています。しかしながら、実際に災害を受けて営業が一時的に停止してしまった場合、失うのは建物や財物だけではありません。

  • 01

    被災するとどうなる?

    問題なく営業している間に得られたはずの売上まで失ってしまいます。また、復旧時にスムーズな営業活動を行なうためには、業務内容を把握した従業員を確保しておく必要があります。たとえ売上がなくても、営業中断している間の従業員の生活を保障しなければなりません。いくつか支店を抱えていたり従業員の数が多かったりすればするほど、必要な費用は予想をはるかに上回るものです。

    こういった会社の損失額は、建物・財物の再建費用を超えてしまう可能性があります。だからこそ、利益保険は業種を問わずすべての事業者にが加入すべき重要な保険と言えるでしょう。

  • 02

    火災保険との違いは?

    利益保険が火災保険と大きく異なるのは、本来であれば得ていたはずの利益を補償してくれる点です。営業収益減少額に対して何%補償するか、保険契約時に取り決めた範囲内で補償してくれます。

    「うちは大丈夫だろう」と高を括っていても、いつ何が起こるかわかりません。経営状況の善し悪しに関係なく、思わぬアクシデントの発生で営業ができなくなった時の備えは十分にしておきましょう。

  • 03

    利益補償は営利団体にとって本当のリスクヘッジになる

    利益保険を取り扱っている保険会社はいくつかありますが、それぞれ補償範囲や保険金として支払う上限額が異なります。仮工場や仮店舗を借りて営業継続する場合や、早期復旧に向けての臨時の支出が必要な場合には、追加費用を補償してくれる保険会社もあるのです。

    保険は経営者が自社を守るための最強の盾です。会社の規模や事業内容に見合った補償プランを組めそうなところを数社ピックアップし、見積りを出してもらうと良いでしょう。

参考文献

[1]三井住友海上「企業費用・利益総合保険のご案内」

URL:https://www.ms-ins.com/pdf/business/cost/kigyo-hiyou.pdf

[2]損保ジャパン日本興亜公式サイト「企業費用・利益総合保険」

URL:https://www.sompo-japan.co.jp/~/media/SJNK/files/hinsurance/contents1/hcorpo_1702.pdf
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