HOME » 【特集】従業員への損害賠償は政府労災だけでカバーできるか » 会社が負うべき安全配慮義務・賠償責任とは
特集 従業員への損害賠償は 政府労災だけでカバーできるか
会社が負うべき安全配慮義務・賠償責任とは(イメージ)

会社が負うべき安全配慮義務・賠償責任とは

安全配慮義務と賠償責任の具体的な内容

社員が安全かつ安心して働くために、会社には安全配慮義務が生じます。では具体的に、どんな義務を果たす必要があるのでしょうか。万一、労働災害が起きた場合の賠償責任についてもあわせて紹介します。

会社が負う安全配慮義務・賠償責任とは

労働災害を未然に防ぐために会社が配慮すべきこと

安全配慮義務とは、「雇用している労働者の生命と健康が保てる環境を、雇用者が必要な配慮をしながらつくる義務」のことです。災害の発生を未然に防ぐために、雇用者はあらゆることを想定して配慮することが求められます。

安全配慮義務というように、これはあくまで「義務」ですから結果責任ではありません。つまり、何らかの労働災害が生じても、それなりの防止策を講じていれば安全配慮義務違反に基づく損害賠償責任は逃れられます。とはいえ、裁判になった場合には、その防止策について厳しく判断されるのが通例です。

安全配慮義務の具体的内容

安全配慮義務の内容は、主に「設備・作業環境」の面と「人的措置」の2つに大別されます。

設備・作業環境では、労働者が安全に使えるよう機械などの設備を保つこと、危険を伴うおそれがある場合には保護具などを用意することなどが挙げられます。

人的措置では、安全に働けるよう労働者に教育訓練を受けさせる、監視人をつけて作業させるといったことが義務として挙げられます。

安全配慮義務が及ぶのはどこまで?

契約上では企業(個人事業主)が負う

安全配慮義務の責任を負うのは、その労働者と雇用契約をしている事業主(企業)にあります。とはいえ、実際に会社を運営しているのは工場長であったり、その労働者の上司(部長や課長など)ですから、こうした現場の管理監督者が安全配慮義務の履行補助者とみなされます。万一労働災害が起きた際には、履行補助者が責任を負うことがあります。

パートやアルバイト、派遣社員も及ぶのか

パートやアルバイトといった非正規の労働者に対しても、安全配慮義務は及びます。雇用者は、十分な教育を受けさせ労働災害を未然に防ぐ配慮をするのは当然のことでしょう。

また、派遣社員の場合は雇用契約は派遣会社との間にありますが、実際に作業の指導をするのは派遣先の企業であるため安全配慮義務を負うことになります。

下請け・出向の労働者の場合

直接的に雇用契約がない下請け労働者であっても、元請けの現場責任者が作業の指導などをおこなっていた場合には、安全配慮義務が認められます。

一方、出向している労働者の場合は出向元・出向先の両社が、安全配慮義務を負うのが通例です。

そもそも、労働災害と事故の違いは?

労働災害の定義は「業務が原因」であること

労働災害の定義は、労働安全衛生法第2条で規定されています。要約すると、「業務が原因となって、労働者がケガや病気、死亡した場合」のことを労働災害といいます。

なお、就業中か否かは関係ありません。例えば、過労が原因となり自宅で自殺したという場合についても、労働災害とみなされることがあります。

また、通勤中に起きた事故でケガまたは死亡した場合にも労働災害に認定されることがありますが、状況によっては労働保険法(労働者災害補償保険法)においては補償対象とみなされず、労働災害に含まれないことがあります。

労働災害が起きた場合に問われる責任

刑事責任と民事上の損害賠償責任

  • 刑事責任と民事上の損害賠償責任

    刑事責任としては、安全配慮義務を怠ったことが原因で労働者を死傷させた場合、業務上過失致死傷罪が問われることがあります。このほか、労働安全衛生法に基づく労働災害防止措置を怠った場合においても、刑事責任が課せられます。

    民事上については、安全配慮義務違反や不法行為責任などで損害賠償請求をされることがあります。たとえ企業が、労働安全衛生法を守っていたとしても、それは最低限守るべきことであって、安全配慮義務をしっかり履行していたとはいえず、責任が追及されることがあります。

  • 災害補償責任

    労働基準法第8章では、労働者の負傷または疾病をした際、企業側の過失の有無を問わず災害補償責任を負うことが定められています。なお、労働保険を支給されることで免責となり、民事上の損害賠償責任を免れられるのが通例です。

  • 社会的責任

    労働災害のレベルにもよりますが、このほかにも業務停止命令などの行政処分や、取引先との取引停止といった社会的な責任を問われることもあります。

任意の上乗せ労災と、包括的な損害賠償責任保険も検討余地あり!

上乗せ労災、損害賠償責任保険の有用性について

労働災害は起きないことが大前提です。

もし労働災害が起きたら、まずは被災者への補償を第一に考えましょう。

労災の状況によっては、安全配慮義務や、不法行為責任などが該当するので、刑事責任を問われる可能性もあります。

そのため、被災者への補償に留まる政府労災だけでは不充分といえるでしょう。

訴訟費用など、政府労災で補えない部分を補償してくれる民間企業の保険に「労災上乗せ保険」「使用者賠償責任保険」などがあります。

これらの保険は、億単位の損害賠償請求も補償対象です。

包括的な総合賠償責任保険にいたっては、労働慣行や事業に起因する問題も補償範囲に含まれます。

労働災害に対しても、それ以外の問題にも、包括的な損害賠償責任保険への加入が一番のリスクコントロールになります。