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特集 従業員への損害賠償は 政府労災だけでカバーできるか
賠償責任保険の補償・支払い事例(イメージ)

賠償責任保険の補償・支払い事例

労災の賠償額と使用者賠償責任保険で支払われた保険金の事例

実際にどのようなケースで使用者賠償責任保険が支払われるのでしょうか。ここでは、労災による民事訴訟と使用者賠償責任保険で支払いがされた事例を紹介しています。あわせて政府労災でカバーできる範囲と金額を掲載していますのでご参考ください。

政府労災だけでは足りなくなる、損害賠償額の例

ケース 事例 支払い額
case:1 過労による脳障害 1億9,500万円
case:2 長時間労働による自殺 4,500万円
case:3 勤務中の事故による死亡 4,500万円
case:4 過労による死亡 7,800万円
case:5 パワハラによる自殺 1,062万円
case:6 過労による自殺 700万円

Case1:レストラン支配人が過労で倒れ脳に障がいが残った

長時間労働など過労が原因で倒れたレストラン支配人。命は取りとめたものの脳に障がいが残り、生涯寝たきりを余儀なくされました。家族は会社を相手に損害賠償を請求。損害額約1億9,500万で和解成立しました。

Case2:弁護士が長時間労働で自殺

介護付き老人ホームで働いていた男性従業員が自殺した事件。原因は勤務先での長時間労働でうつ病を発したからだと遺族が訴訟を起こしました。遺族側が1億1,580万の支払いを求め、判決では約6,590万の支払いになりました。

Case3:知的障がい者が勤務中に死亡

知的障がいを持つクリーニング店勤務の従業員が、業務用洗濯乾燥機に巻き込まれて死亡した事件。安全配慮義務違反があったと遺族側が民事訴訟を起こしました。裁判では従業員側にも2割の過失があったとし、会社側には約4,500万円の賠償判決を下しました。

Case4:被災者が会社と役員に対して訴訟

飲食店勤務の男性が急性心不全で亡くなった事件。遺族側は過重な労働が原因であるとして、会社だけでなく役員個人に対しても損害賠償請求を求めました。裁判で役員にも責任があることを認定。あわせて約7,800万円の支払いが命じられました。

Case5:パワハラが原因で従業員が自殺

執拗ないじめが原因で統合失調症を発症した従業員が自殺をした事件。その内容が書かれた遺書も見つかり、遺族が訴訟。安全配慮義務違反があったとし、1,062万円の損害賠償金の支払いを命じました。

Case6:医師の遺族が労災認定後に訴訟

過労が原因で自殺した小児科医の勤務医。労災認定はされていたものの遺族側は納得できず、「企業が安全配慮を怠った」と訴訟を起こします。裁判は最高裁まで進み、病院側が700万の和解金を支払うことで決着しました。

政府労災でカバーできる賠償額

政府労災のカバー範囲と金額

ケガによる労災をはじめ、近年は過労による死亡や後遺障害、精神疾患による労災事故が増加しています。そのため、企業は高額な賠償の訴訟リスクにさらされているのです。政府労災で出る給付の種類は、療養給付・休業給付・傷病年金・障害給付・遺族給付・葬祭給付・介護給付。幅広く対応していますが、それぞれの給付ごとに支給額の計算方法が決まっているため、企業側からみて十分な金額がでないことが多いようです。

政府労災でカバーできなかった事例

例えば、扶養家族を2名抱えた労働者(給与360万円、賞与140万円)35歳が死亡した事故では、慰謝料などを含め労災訴訟で約1億円の高額な損害賠償を支払わなければなりませんでした。しかし、政府労災からの給付は1,000万円程度。差額の約9,000万円は企業が負担しなければならなかったのです。

使用者賠償責任でどれくらいカバーできるのか?

使用者賠償責任保険は「自動車の任意保険」のようなもの

加入義務がある政府労災だけでは高額な損害賠償に備えることができません。また、損害賠償訴訟時の慰謝料や弁護士費用、逸失利益や休業補償の不足分なども政府労災からでないので注意が必要です。その点、使用者賠償責任保険に加入すれば、自動車の任意保険と同様に不足分を賄うことができます。カバーできる賠償額は、保険によって異なりますが、1労働災害あたり3億円補償してもらうことも可能。会社の業務リスクや従業員数等で調整すると良いでしょう。

使用者賠償責任保険の支払い例

ケース 事例 保険金の金額
case:1 窓拭き作業中の転落による死亡 3,000万円
case:2 工場での全身やけどによる死亡 2,100万円
case:3 看板設置中の転落による死亡 1,000万円
case:4 通勤時の交通事故による死亡 1,000万円
case:5 工事現場での事故による死亡 500万円

Case1:従業員が窓拭き作業中に転落し死亡

建物の9階で窓拭きをさせられていた従業員が、バランスを崩し転落して死亡したケース。会社は安全配慮義務違反があったことを認め賠償額を支払いました。そのうち約3,000万円を保険で支払いました。

Case2:従業員が工場で全身やけどを負い死亡

工場で酸素濃度計測器の取り付け作業をしていた作業員が、電気炉から噴出した熱風で大やけどを負い、死亡した事件。賠償額のうち労災で賄えなかった約2,100万円を使用者賠償責任保険の補償で支払いました。

Case3:労働者が高所作業中に転落し死亡

ビルの屋上で看板設置工事をしていた労働者が、誤って屋上から転落した事故で死亡しました。労災認定後の民事訴訟で会社に賠償責任が発生。保険から約1,000万円が補償されました。

Case4:パート従業員が出勤途中の交通事故で死亡

スーパーに勤めるパート従業員が、出勤途中に交通事故に巻き込まれて死亡。通勤労災も使用者賠償責任保険の適用を受けることができるため、約1,000万円の保険金が支払われました。

Case5:作業員がビルの解体工事現場で死亡

ビルの解体工事現場で起きた事例です。重機を使っての解体作業中にコンクリート片が落下。下にいた作業員が死亡してしまいました。裁判では作業員にも過失割合が認められましたが、高額の賠償額を支払うことに。約500万円を保険で支払いました。

使用者賠償責任保険の補償

高額賠償に備えるには

何か起きた場合、一度に数千万円から数億円が必要になる労災をめぐる民事訴訟。それだけの現金が常にある規模の大きな会社であれば対処できますが、一般的な会社でそれだけ大きな金額を用意するのはなかなか大変です。一度の訴訟が会社の経営に大きなダメージをあたえることもありますので、労災をめぐる民事訴訟に備えて使用者賠償責任保険への加入を検討すると良いでしょう。