特集 従業員への損害賠償は 政府労災だけでカバーできるか
実質的に営業停止とも言える厳しい処分(イメージ)

実質的に営業停止とも言える
厳しい処分

労災事故が発生した場合や、労働環境に何らかの問題が疑われる場合、労働基準監督署は、事業者へ立ち入り調査を行うことがあります。調査の結果、同局から問題を指摘された場合には、事業者は速やかに是正勧告にしたがった対策を講じなければなりません。対策を講じている期間、実質的には営業停止に近い状態になることもあります。事業者は常に良好な労働環境を維持するよう努める必要があるでしょう。

労働基準監督署が調査に来るタイミング

労災事故の発生時に限らず、業務の現場に問題ありと疑われる事例においては、労働基準監督署が調査に来ることがあります。以下、一般的に行われている労働基準監督署の調査のタイミングです。

定期的な調査

「定期監督」と言います。労働基準監督署の監督計画にしたがい、同局が任意で業者を選択して行う調査です。原則として予告なしで調査が入ります。

労災事故が発生したときの調査

「災害時監督」と言います。一定以上の労災事故が発生した際、その原因究明や再発防止策の提案を行うために行われる調査です。

是正勧告を受けた後の調査

「再監督」と言います。調査によって是正勧告を受けた業者に対し、その勧告が実行されているかどうかを確認するために行われる調査です。是正報告書を未提出の業者にも行われます。

労働者から要請があったときの調査

「申告監督」と言います。労働者からの告発に基づき、その告発内容を確認するために行う調査です。労働者の告発であることを伏せて調査を行う場合と、労働者からの告発であることを明らかにして行う場合とがあります。

労働基準監督署が調査をするポイント

労働基準監督署が業者を調査する際、主に次のポイントを重点的にチェックしています。

  • ・墜落・転落防止措置の状況
  • ・安全衛生管理体制
  • ・作業主任者の適切な配置
  • ・型枠支保工の状況
  • ・機械の使用状況
  • ・労働時間・休憩時間の状況、など

以上の中に不適切な状況が認められた場合、業者は一部営業停止を余儀なくされたり、または是正勧告を受けたりすることとなります。

調査の結果として会社が受ける影響

労働基準監督署が調査に立ち入って「問題なし」と判定すれば、業者の営業には特に影響がありません。逆に、何らかの問題を指摘された場合には、問題の内容に応じ、業者の営業には各種の影響が及びます。
以下、調査の結果として会社が受ける影響のうち、主なものを確認しましょう。

機械等の使用ができなくなる

業務に使用している機械等の使用が、一時禁止されることがあります。労働基準監督署が「状況が改善された」と確認するまで、当該機械等を使用できません。
主要業務に関わっている機械等であれば、実質的には、営業停止命令に近い処分となることでしょう。

特定区画に立ち入ることができなくなる

問題が指摘された特定区画内について、従業員の立ち入りが一時禁止されることがあります。特定区画内の状況が改善されたことを労働基準監督署が確認するまで、指定現場における業務を遂行することができません。
主要業務に関わる区画への立ち入りが禁止されると、実質的には営業停止と同様の処分になります。

事業主が送検される

労働基準監督署の調査によって事業主に重大な過失が指摘された場合、事業主は送検(身柄等が検察庁へ移送されること)される可能性があります。
会社にとって事業主は、業務における意思決定の最高機関です。他の従業員たちで営業を継続することができれば良いのですが、実質的なワンマン経営者などが送検されると、事業がストップしてしまう恐れがあります。

指摘された内容を是正し、後日報告する

調査を経て何らかの是正勧告を受けた場合、勧告にしたがって業務内容を是正しなければなりません。また、労働基準監督署が指定した期日までに、是正内容をまとめた報告書を提出する義務も生じます。
期日までに是正報告書の提出がなされない場合、労働基準監督署の再調査が入ることは上述の通りです。

なお、休業4日以上をともなう労災事故が発生した場合、業者は「労働者死傷病報告書」を労働基準監督署に提出しなければなりません。これを提出しない場合、労災隠しとして罰則や企業名の公表などが行われます。
たとえ労災事故を隠したい諸々の事情があったとしても、事業者は事故を隠さず、速やかに労働基準監督署へ報告しなければなりません。