HOME » 経営の幅が拡がる、賠償責任保険の補償範囲 » 履行保証保険の補償範囲
損害賠償責任保険の補償範囲

履行保証保険の補償範囲とは

公共工事の債務不履行を金銭で補償

履行保証保険とは、主に公共事業において業者と保険会社との間で交わされる保険の一つ。受注した工事が、何らかの事情で債務不履行の状態となった場合、残りの工事に発注者が費やす金銭について補償する制度です。公共工事は地域住民のインフラに関わる問題なので、発注者である国や地方公共団体は、業者に対して保険加入を求めてくることが一般的です。

履行保証保険とは

履行保証保険とは、何らかの建設工事が工期で終了しなかった場合(債務不履行に陥った場合)、建設業者に代わって、保険会社が発注者に金損的補償を行なう保険。通常は、国や地方自治体が発注する公共工事において交わされるタイプの保険ですが、まれに民間企業が発注した建設工事において、工事の規模が大きい場合には、履行保証保険が結ばれることもあります。

公共工事などの大規模な工事は、地域のインフラ整備の一環でもあります。インフラが不安定な状態だと、住民の生活に様々な影響を与えかねません。

工事を受注した業者は、いかなる事情があれ、工期中に工事を終了させる社会的責務を負うことになりますが、最悪、工事が不履行に終わったとしても、地域への影響を最小限に抑える必要があります。その意味において、履行保証保険は非常に重要な役割を持った保険と言うことができるでしょう。

履行保証保険の基本的な補償内容と補償範囲

履行保証保険は、期日までに工事が完了しなかった場合、発注者が被る被害について金銭的な補償を受けるという内容。補償される金銭の種類は、「当初の工事費をもとに補償するタイプ」と「発注者の実損をもとに補償するタイプ」の2通りに分かれます。いずれのタイプで金銭が補償されるかについては、業者と保険会社との契約内容や発注者の意志等によって決まります。

■当初の工事費をもとに補償するタイプ

2通りある補償タイプのうち、一般的なのが「当初の工事費をもとに補償するタイプ」です。

たとえば10億円の公共事業において、業者が5億円分の工事を終えた段階で工事続行が不可能となった場合、発注者である国や地方公共団体に対して、保険会社が残りの5億円を補償する、といったタイプの補償です。

後述する「発注者の実損をもとに補償するタイプ」に比べると、様々な計算等をする手間が大幅に省かれるため、通常はこちらのタイプの補償が選択されます。

■発注者の実損をもとに補償するタイプ

10億円の公共事業において、業者が5億円分の工事のあとに債務不履行となった場合、国や地方公共団体は、残りの工事を別の業者に依頼することになります。しかしながら、残りの工事にかかる費用が、必ずしも5億円で済むという保証はありません。仮に残りの工事の費用が6億円かかった場合、この6億円の全額を補償するのが「発注者の実損をもとに補償するタイプ」の履行保証保険です。

保険金の計算が多少複雑なのですが、どちらかと言えば、上記「当初の工事費をもとに補償するタイプ」よりも理に適った補償制度と言えます。

保険会社各社の履行保証保険・工事に関する保険概要

大手保険会社各社の履行保証保険、ならびに工事に関する保険概要を一覧としてまとめました。具体的な補償内容や条件は、工事の規模や内容によっても異なります。公式サイトも合わせてご確認ください。

■三井住友海上

・建設中の事故から履行保証まで網羅

三井住友海上の建設業用保険「ビジネスプロテクター」には、事故や管理不備から工事遅延リスクなど履行保証に至るまで、建築工事に伴うあらゆる賠償リスクについて幅広く補償してくれる内容が網羅されています。

火災や落雷、台風、洪水といった不慮の災害のみならず、作業員のミスや第三者による建築資材の盗難、さらには設計や施工の欠陥によって発生した損害まで、さまざまな事象に起因するトラブルについても総合的にカバーされるため、万一の備えとして非常に心強いものだといえるでしょう。
・補償内容の抜け漏れや重複の懸念が不要

ビジネスプロテクターでは、想定されるリスクをひとつの保険契約にてまとめて補償する体制がとられています。リスクごとにそれぞれ異なる保険に加入する必要がないため抜け漏れを防げるほか、補償の重複もなくなる効率の良さもポイントです。

■東京海上日動火災保険

・工事内容によって選べる工事保険

東京海上日動の工事保険には、建設工事保険・組立保険・土木工事保険の3タイプが用意されており、対象工事によって工事保険の種類も分けられています。個人宅への家電の設置工事から、マンション建設やトンネル工事といった大規模な工事まで、トラブルや損害の規模、復旧費用などの内容に応じて幅広く、かつ必要な補償を受けられる点が大きなメリットです。

・被保険者はすべての工事関係者

保険の契約者となれるのは、発注者と受注者、そして下請けとなる専門工事業者となりますが、その補償対象となるのは、建築・作業機材のメーカーや供給者など工事に関わるすべての関係者が含まれます。より一層にきめ細やかな補償を受けられる点が魅力的です。

■損保ジャパン日本興亜

・公共工事の請負契約の保証人になってくれる保険

損保ジャパン日本興亜の公共工事履行保証証券(履行ボンド)は、国や地方自治体、地方の公営企業などが発注する公共工事に関して、工事業者の請負契約をバックアップする履行保証保険です。対象工事は公共工事(測量・設計含)となり、もしも請負業者が工事を完了できない場合、請負契約に定められている違約金や、残りの工事の完遂を保証してくれます。

金銭保証と役務保証のどちらによって保証されるかは、工事ごとに発注者によって指定されるので、万が一の際の保証として有用性が高い点がメリットのひとつです。
・引き渡し後の欠陥についても保証

工事完成後に発見された欠陥についても、一定期間内であれば保証の範囲内となる瑕疵担保保証特約条項が設けられています。こちらもリスク管理として魅力的なポイントです。

■AIG損保

・3つの保険で構成される工事総合補償プラン

AIG損保では、建設業を営む会社に向けて工事に伴うリスクを総合的に補償するために、従業員や下請作業員の労災事故に対するハイパー任意労災、工事作業に起因する第三者への損害賠償責任に対する事業総合賠償責任保険(STARs)、そして建築中の建物や建築資材についての損害を補償する建築工事保険の、3つの保険を組み合わせた工事総合保障プランを提供しています。

・工事遅延損害リスクも基本補償でカバー

元請工事中に生じたトラブルによって工期までの工事完了が難しくなり、完了予定日の翌日から6日以上の遅延が発生した場合、それに伴う工事請負契約書に基づいた法律上の損害賠償責任をカバーしてくれる、工事遅延損害リスクに対する補償も重要なポイントです。

■日新火災海上保険

・工事に関する財物のリスクをトータルカバー

日新火災が提供する工事の保険(工事の保険特約付帯建設工事保険)では、建設工事の対象となっている建物や建設用機械などに限らず、工事現場まで輸送中の建築資材や、発注者から提供された資材、仮設事務所の什器や備品に至るまで、建設工事に関わる様々な財物に関する損害を所有者を問わず補償しています。また、それぞれの財物に関する明細の提出が不要という点もポイントです。

・損害保険金は請負金額に上乗せも可能

損害保険金は1回の事故についてそれぞれの工事ごとの請負金額を上限とし、支払い回数に制限なく支払われます。さらに請負金額に対して1千万円から1億円の範囲で支払い限度顎を増額設定できる点も、大きなメリットのひとつです。

■明治安田損害保険

・作業リスクを補償する建設工事保険

明治安田損保では、ビルや工場、マンションや住宅といった建物の新築工事・増改築工事において、工事対象となっている建築物や、工事作業上で用いられている建築資材などに偶発的に発生したトラブルによる損害を、保険金によって幅広く補償してくれる建設工事保険が用意されています。

・工事に伴って生じる損害賠償責任リスクもカバー

明治安田損保の請負業者賠償責任保険では、ビルや工場といった建物の建設工事だけでなく、道路建設や土木工事など様々な請負工事事業に関してもカバーします。所有・使用・管理している施設の管理不備や欠陥によって他人に生じた法的な損害賠償責任に対して、その賠償金が補償されます。

■共栄火災

・工事現場で生じる様々な損害リスクを包括的に補償

共栄火災が提供している建設工事保険では、火災や落雷、台風といった災害による損害、作業ミスや車輌事故による損害など、工事現場において発生しうる様々な物的損害リスクに対して幅広い補償を受けられます。

さらに第三者への損害賠償責任に関する補償を追加することもできるので、ニーズに合わせた補償内容の設計ができます。
・3種類の手厚い保険金

事故発生の直前の状態に復旧するための損害保険金に加えて、1事故につき100万円を限度とした損害保険金の20%を臨時費用保険金として受け取れるだけでなく、保険金の6%相当を残存物取片付け費用保険金として受け取れるため、万一の際の金銭的リスクを軽減できます。

■チューリッヒ

・グローバル事業に関する工事のリスクを幅広く補償

国際的企業であるチューリッヒの建設工事保険では、国内外での工事対象となる建物について補償を受けられるだけでなく、世界200カ国以上に拠点を持つチューリッヒならではのノウハウに基づき、現地証券発行やリスクエンジニアリング・サービス、各国の法規制への対応サービスなど、他言語・他文化での工事作業についても補償される点が大きなメリットです。

・操業遅延保険をセット可能

ホテルなどを対象にした工事において、保険金の支払い対象となるトラブルで損害が発生し営業開始が遅延した場合、喪失利益や減収を軽減・防止するために要した収益減少防止費用を補償する「操業遅延保険」を、建設工事保険とセットで加入できる点も魅力のひとつです。

■あいおいニッセイ同和損保

・公共工事の受注をバックアップ

あいおいニッセイ同和損保では、公共工事において請負工事を完成できなかった場合に金銭的保証または役務的保証を受けられる公共工事履行保証証券(履行ボンド)などが用意されています。また、発注元から、瑕疵担保保証特約の付帯が求められた場合にも、補償内容に含めることが可能です。

・様々な工事に関するトラブルを総合的に補償

公共工事履行保証証券などは、必ずしも全ての建設業者が加入できるわけではありませんが、あいおいニッセイ同和損保では建設業に関わる様々な賠償リスクをまとめて補償する「タフビズ建設業総合保険」も用意しており、あらゆる損害リスクが包括的に補償されます。ワイドプランでは、工事遅延損害補償によって工事が遅延した場合の損害を補償してもらうことも可能です。

■大同火災海上保険

・建物の工事に伴うリスクを広範囲で補償

大同火災では、ビルやマンション、工場といった建物の工事において、その工事期間中に発生したトラブルによる損害を幅広く補償する建設工事保険が提供されています。また、建物に機械や装置、貯水タンクなどを取り付ける組立工事に関しても、それらの工事作業中に発生したトラブルによる損害を補償する組立保険が用意されており、これらの保険を複合的に契約することで、工事における様々なリスクをマネジメントすることが可能です。

・第三者への賠償には請負業者賠償責任保険でカバー

工事中に生じたトラブルによって他人の身体や所有物に損害を与えてしまった場合に、その損害賠償責任を補償してくれる保険として、請負業者賠償責任保険も用意されています。

履行ボンドと履行保証保険の違い

履行ボンドは履行保証保険と同じように、工事が債務不履行に終わったときに、保険会社が代わって工事の完了を保障する制度。ただし、履行ボンドと履行保証保険には、補償の内容に大きな違いがあります。

■履行保証保険が補償する範囲

債務不履行によって生じた損害に対し、金銭を補償するのが履行保証保険です。金銭以外での補償は行なわれません。

■履行ボンドが補償する範囲

債務不履行によって生じた損害に対し、金銭、または役務を補償するのが履行ボンドです。役務で補償する場合、発注者に代わって保険会社が業者と契約を結び、費用を支払い、役務を実行します。

■金銭保証か役務補償かを選ぶのは発注者

業者と保険会社とが履行ボンドを結び、万が一、工事が債務不履行に終わった場合、金銭補償がなされるか役務補償がなされるかは、発注者(国や地方公共団体等)の選択に任されます。よって、発注者が役務補償を求めた場合、履行保証保険では対応できないということになります。

履行保証保険を契約する際の注意点

履行保証保険は、一般的な火災保険や自動車保険などとは異なり、加入したい事業者が誰でも加入できる、というタイプの保険ではありません。以下、加入における注意点を3つまとめました。

■あらかじめ保険会社に与信枠が必要

履行保証保険とは、見方を変えれば、債務不履行となった業者を融資で救うという一面もあります。いわば、融資と同じような趣旨があるため、銀行融資と同様、無条件で加入できる保険ではありません。契約に際しては、契約書や発注者からの指示書の他にも、決算書等の書類を提出することで保険会社から与信枠を取っておく必要があります。

たとえば損保ジャパン日本興亜における履行保証保険(履行ボンド)の契約に際しては、保険会社への決算書の提出について次のような規定があります。

  • ・初めて申し込む場合には、直近2期分の決算書を提出する
  • ・契約締結後は、定期的(通常、年1回)に決算書を提出する[1]

他にも、保険会社によって事項経歴や会社概要等を示す書類などが求められる場合もあります。

■日頃からお付き合いのある保険会社に申し込む

昨今の履行保証保険においては、自動車保険や工事関連保険などで日頃からお付き合いのある保険会社でなければ、なかなか与信枠が取れないという現状があります。

よって、履行保証保険の契約を希望する際には、日頃からお付き合いのある損害保険会社に申し込んだほうが契約に有利となるでしょう。

■落札したら当日中に保険契約を

公共工事においては、落札の翌日が契約予定日・工事初日という例も少なくありません。よって、落札したら当日中に履行保証保険を契約するようにしましょう。

スピーディに契約できるよう、次のような情報をあらかじめ用意しておくことをお勧めします。

  • ・工事件名
  • ・工事を行なう現場の所在地
  • ・請負金額(消費税込み)
  • ・発注者の名前
  • ・発注者の住所
  • ・請負者の名前
  • ・請負者の住所
  • ・契約締結日
  • ・予定工期

万が一の事が起こったら遅滞なく保険会社に通知

履行保証保険は、工事現場のリスクを補償する組立保険や労災と違って、発注者である国や地方の公共団体の利益を最優先で守るための保険です。公共工事は多くの手続きや入札・落札で時間がかかるデメリットが挙げられますが、貸し倒れの心配がなく、施工実績は金融機関や地域住民への信用につながります。安定した発注量が期待できることからも、落札するメリットは大きいと言えるでしょう。

  • 01

    公共事業には欠かせない保険

    国や地方の公共団体が発注者となる事業の場合、業者と保険会社の間で「履行ボンド」もしくは「履行保証保険」を交わすことが一般的になっています。いわゆる公共工事は、地域のインフラ整備につながる大切な工事です。万が一にも債務不履行が発生した場合、最もダメージを受けるのは住民になるので、業者に履行保証保険を交わすよう求めています。

    発注者によっては、金銭的保証を行なう「履行保証保険」と、役務的保証も兼ね備えている「履行ボンド」のいずれかを指定されることがあります。特に指定がなければ、履行保証保険と履行ボンド、どちらも対応している保険会社を選びましょう。

  • 02

    与信も注意の上で選びましょう

    ただし、注意すべきは無条件で加入できる保険ではないということ。履行保証保険は、何らかの事情で債務不履行となった業者を融資するためのものです。保険会社からの与信枠がなければ加入できません。

    そのため、日頃から工事に関する保険や自動車保険で付き合いのあるところに申し込むほうが有利に契約を進められるでしょう。

    ほとんどの発注者は、公共工事の落札後にすぐ工事開始日を設けているため、スピーディーな契約が必要になります。書類に記入すべき情報は、あらかじめ用意しておいてください。

    発注者からの信用を失わないためにも、工事を請け負った事業者は、保険約款をしっかり再確認しておくことが大切です。万が一のことが起こった際は、遅滞なく保険会社にありのままの状況を報告してください。

参考文献

[1]損保ジャパン日本興亜「公共工事 履行保証証券 履行ボンド」デジタルパンフレット

URL:http://www.kinoshita-hoken.co.jp/koukyoukouji.pdf