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生産物賠償責任保険(PL保険)の補償範囲
製品・サービスによる事故(イメージ)

PL保険の
補償内容とは?

生産物賠償責任保険(PL保険)とは

生産物賠償責任保険、通称「PL保険」は企業の製品や仕事の結果に欠陥があったことにより、製品の購入者や利用者に損害を与えてしまった場合の賠償責任を補償してくれる保険です。

ここでは、生産物賠償責任保険(PL保険)について、加入を検討する際におさえておきたいポイントや、補償の範囲について解説します。

PL保険は飲食業、製造業、工事業など多くの業種に関わる保険

生産物賠償責任保険はその名前の通り、企業の生産物による賠償責任をカバーしてくれる保険です。飲食業や製造業、工事業等など、モノを生産・販売する企業はPL保険への加入が必要不可欠と言えるでしょう。

【想定される事故例】

  • ・飲食店にて提供した食事が原因で集団食中毒が発生した
  • ・販売した電化製品に構造上の欠陥があり、購入者の自宅で火災が発生した
  • ・住設会社が取り付けた看板が、作業ミスによって取り付け後に落下、たまたま通りかかった通行人を怪我を負わせてしまった

上記の事例のようにPL保険の補償となりうる事故は多岐に渡ります。そして、これらの事故はモノを生産する企業であれば常に発生する可能性を抱えているため、リスクに備えておく必要があるでしょう。

各保険会社のPL保険概要

保険会社と保険商材 主な補償内容 加入・契約方式
三井住友海上
【ビジネスプロテクター】

生産物による事故(身体/財物)
仕事の結果による事故(身体/財物)
不良完成品損害補償(財物)
不良製造品損害補償(財物)
生産物自体の損害補償(財物)
国外流出生産物補償(身体/財物)
基本補償(全プラン共通)
東京海上日動火災保険
【超ビジネス保険】

生産物・完成作業事故の補償
国外流出生産物事故
リコール事故の補償
他人が行ったリコール(サードパーティリコール)の費用に対する賠償事故
不良完成品事故補償特約
生産物・仕事の目的物損壊事故補償特約
基本補償+オプション補償
損保ジャパン日本興亜
【商賠繁盛】

製造、販売した生産物または仕事の結果に起因する賠償責任
人格権を侵害した場合の賠償責任
生産物自体の損害
生産物回収費用
生産物災害補償
基本補償+オプション補償(業種によって異なる)
AIG損保(旧AIU保険)
【総合事業者保険(スマートプロテクト)】

生産物・完成作業危険補償特約(身体/財物)
生産物・仕事の目的物の損壊補償特約(身体/財物)
国外流出生産物危険補償特約
リコール費用追加補償特約
食中毒・特定感染症利益補償特約
基本補償+オプション補償
日新火災海上保険
【ビジサポ(総合賠償責任保険)】

生産物・仕事の目的物自体損壊補償特約
リコール事故補償特約
不良完成品損害補償特約
財物損壊を伴わない使用不能損害補償特約
被害事故弁護士費用等補償特約
被害者治療費等補償特約
基本補償(業種によって異なる)
明治安田損保
【生産物賠償責任保険】

生産物に起因する偶発的事故の法律上の損害賠償責任を補償 基本補償
共栄火災
【K-Biz商売の達人(企業総合賠償責任保険)】

生産物危険補償
生産物自体の損害および回収費用補償追加特約
事故対応費用補償特約
訴訟対応費用補償特約
人格権侵害補償特約
財物損壊を伴わない使用不能損害補償特約
食中毒・特定感染症利益補償特約
基本補償+オプション補償(プランによって異なる)
あいおいニッセイ同和損保
【タフビズ賠償総合保険】

生産物・仕事の目的物損壊補償
国外一時持出品補償
リコール費用補償
不良完成品損害補償
不良製造品損害補償
基本補償(全プラン共通)
大同火災海上保険
【DAY-PRO!賠償総合保険】

仕事の結果が原因となって生じた賠償
製造した製品が原因となって生じた賠償
販売した製品が原因となって生じた賠償
不良完成品損害補償特約
不良製造品損害補償特約
充実補償リコール特約
限定補償リコール特約
基本補償+オプション補償

保険会社各社の生産物賠償責任に関する保険概要

三井住友海上「ビジネスプロテクター」

■事業の損害賠償リスクを包括的にカバーする保険

三井住友海上のビジネスプロテクターは、様々な事業を行う上で想定される損害賠償リスクについて、1つの保険で包括的に補償する保険です。

補償範囲としては、労災の法定外補償だけでなく、使用者賠償責任もカバーされており、政府労災保険ではカバーされない損害賠償責任による慰謝料も補償範囲に含まれてる為、万が一の際の安心感も高まります。

PL保険としての性質だけでなく、施設や業務中の事故に関するリスクに備える保険としての性質も併せ持つので、事業者にとっては便利な保険といえるでしょう。また、ビジネスプロテクターは、製造・販売・飲食・サービス業と、建設業の、2つの業種に対して専用保険が用意されている上、海外輸出用に特化した保険が用意されている点も特徴です。

契約方式としては、ベーシックプラン・プレミアムプランの2プランが基本補償として用意されており、生産物の損害賠償リスクについては、どちらのプランでも共通してカバーされている点が大きなメリットといえるでしょう。

東京海上日動火災保険「超ビジネス保険)」

■PL事故を含む事業リスクに1つの保険で幅広く備える

東京海上日動火災保険の超ビジネス保険は、財産に関する補償や工事に関する補償、賠償責任に関する補償など、事業に伴うリスクをまとめて補償してくれる保険です。

賠償責任に関する補償としては、生産物・完成作業事故の補償が基本補償2として用意されており、国外へ流出した製品に起因する事故についても一緒にカバーできます。

また、基本補償6ではリコール事故についても補償されており、万が一の際に製品回収が必要になった場合にも備えられます。

その他、基本補償2に付加可能なオプション補償として、不良完成品事故補償特約や生産物・仕事の目的物損壊事故補償特約なども用意されており、ニーズに合わせてさらに充実した補償を設計することが可能です。

損保ジャパン日本興亜「商賠繁盛」

■事業にまつわる損害賠償責任リスクをまとめて補償

損保ジャパン日本興亜の商賠繁盛は、賠償責任保険や施設所有管理者特約条項、生産物特約条項など、損害賠償リスクに備えられる保険が包括的に組み込まれた保険であり、様々な事業リスクに対して手厚い補償を受けられます。

また、生産物や仕事の結果に起因する賠償リスクについては、基本補償で幅広くカバーできる上、自社に損害賠償責任がない生産物に関連する事故についても、オプションによって見舞い費用が補償されるので、リスク管理として効果的な保険といえるでしょう。

尚、商賠繁盛は製造業や販売業、飲食業、IT事業など、様々な業種ごとに保険商材がそれぞれ用意されており、事業者の規模やニーズに合わせてより綿密なプランニングが可能です。

AIG損保(旧AIU保険)「総合事業者保険(スマートプロテクト)」

■手厚い基本補償とニーズに合わせたオプション補償でリスク管理

AIG損保の総合事業者保険(スマートプロテクト)は、業務災害や雇用リスク、賠償責任といった事業リスクに対して、充実した基本補償と、ニーズに合わせたオプション補償を自由に組み合わせることで、柔軟かつ総合的に備えられる総合賠償責任保険です。

イメージとしては、各分野の事業リスクに関して、基本補償で備えながら、必要なオプションで補償を拡大していく形になります。

一般的なPL事故についての補償は、基本補償として用意されている上、国外での事故やリコール費用などに対してもオプションで補償範囲を拡大できるので、事業内容に合わせた補償を過不足なく設計していくことができます。

日新火災海上保険「ビジサポ(総合賠償責任保険)」

■業種ごとの様々な賠償責任リスクを総合的にカバーする保険

日新火災海上保険のビジサポ(総合賠償責任保険)は、様々な業種に特有の事業リスクを包括的に補償する保険です。

ビジサポでは、業種別の専用プランが用意されており、それぞれの業種に特化した賠償責任リスクが補償されている点が特徴です。ビジサポで展開されている業種別プランとしては、製造業や飲食業、小売業、建設業など全7事業分があり、またさらに事業者ごとのニーズに合わせて、細かい補償内容を設計していくことができるので、1つの保険で充実したリスク管理を行えるという点が大きなメリットといえるでしょう。

明治安田損保「生産物賠償責任保険」

■生産物に起因する事故の損害賠償責任を補償する保険

明治安田損保の生産物賠償責任保険は、被保険者が生産または販売したものが、他人に引き渡された後に生じた事故や、被保険者の仕事の結果によって生じた事故に起因する、法律上の損害賠償責任を補償する保険です。

共栄火災「K-Biz商売の達人(企業総合賠償責任保険)」

■PL事故に対する賠償責任もベーシックプランから手厚く補償

共栄火災のK-Biz商売の達人(企業総合賠償責任保険)は、事業活動を取り巻く多種多様な賠償責任リスクについて、総合的にカバーしてくれる保険です。

基本補償として、ベーシックプラン・ワイドプランの2プランが用意されており、PL事故については、両プランに共通して損害賠償金が補償されているだけでなく、見舞い費用や回収費用に関する補償が備えられている点も見逃せません。

また、そこに加えてオプション補償を付加することができ、さらに補償範囲を拡大可能です。

保険期間中の総支払限度額は1億~5億円の範囲で選択でき、自己負担額が0円という点も特徴です。

あいおいニッセイ同和損保「タフビズ賠償総合保険」

■高額な賠償訴訟にも基本補償で備えられる安心の総合賠償責任保険

あいおいニッセイ同和損保のタフビズ賠償総合保険は、他人の身体や財物に対する損害賠償責任について、包括的に補償してくれる保険です。

基本補償の範囲は、「エコノミー」・「ベーシック」・「ワイド」の3プランから選択でき、ベーシックプランを選択すれば使用者賠償責任補償や事業者費用補償などが追加され、ワイドプランではさらにメンタルヘルスやハラスメントに関するリスクもカバーできます。

基本補償として、ベーシックプランとワイドプランの2プランが用意されており、PL事故については両プランに共通して、様々な補償が手厚く組み込まれている点が特徴です。

また、オプション補償によって、食中毒事故などが起きた際の、第三者の喪失利益を補償したり、リコール費用の範囲を拡大したりすることも可能なので、事業者のニーズに合わせて補償を拡張することもできます。

大同火災海上保険「DAY-PRO!賠償総合保険」

■事業活動を取り巻く様々な損害賠償リスクに備える新しい保険

大同火災海上保険のDAY-PRO!賠償総合保険は、PL事故に起因する賠償責任や、施設・業務に起因する賠償責任などを、包括的にカバーできる保険です。

加えて色々と特約が用意されており、通勤途中の災害について補償を充実させたり、逆に退勤途中の災害については不担保にできたりと、企業のニーズに合わせて契約内容を設計することが可能です。

施設リスク・業務リスク・生産物リスクが基本補償としてカバーされている上、製品が不良品であった場合に生じる事故などについても、オプションにより範囲を拡大して備えることができます。

また、事故に関連する各種費用に特化した費用オプションもあり、基本補償の保険金だけではまかなえない経済的損失についても、カバーすることが可能です。

その他、基本プランの支払限度額を5千万~10億円の範囲(11パターン)から選べるなど、自由度が高い点も特徴といえるでしょう。

PL保険が適用されるケース

PL保険によって補償される、基本的なケースを把握しておきましょう。ただし、実際の補償範囲については、各保険ごとに確認する必要があります。

生産物に起因する事故

  • 製造した自転車に不備があり利用者が転倒して骨折した。
  • 調理販売した弁当が原因で集団食中毒が発生した。
  • 製造した家電に安全性の不備があって火災が発生した。

事業活動の結果に起因する事故

  • 電子レンジの修理ミスにより本体が異常加熱して子供が火傷を負った。
  • 作業ミスが原因となって設置していた看板が落下して自動車の窓を割った。

リコール事故

  • 製造した家電の欠陥が判明して回収する必要が生じた。
  • 製造販売した化粧品の使用期限が誤っており回収した。

不良完成品・不良製造品による損害

  • 製造した部品に欠陥があり、それを使った製品機器が壊れた。
  • 製造したプリンターに問題があり、それで印刷したポスターに不備があった。

国外へ持出・輸出された生産物による損害

  • 海外旅行の為に持って行ったドライヤーに欠陥があり、旅先のホテルが火事になった。
  • 国外へ輸出した製品に欠陥があって、外国で事故に発展した。

PL保険が適用外となるケース

PL保険には適用外となるケースもあり、注意が必要です。

  • 故意または重大な過失、法例違反によって製造・販売・提供された生産物や仕事の結果。
  • 生産物などの効果・性能に関する不当表示や虚偽表示に起因する事故。
  • 正当な理由なくリコールや適切な措置を怠ったことによる損害賠償責任。
  • アスベストや核燃料物質などの有害な特性や作用による被害。
  • 業務遂行に必要な資格を持たない者による仕事の結果による損害。

製造業だけでなく販売業もPL保険に加入してリスク回避を

販売・製造の現場に携わっていると、食品の賞味期限切れや集団食中毒、商品が消費者に怪我を負わせてしまったなどの事故はいつ発生してしまうかわからないもの。もしもの時に備えて保険に加入しておくことは、事故が発生してしまった際、自社を守る盾となります。

中でもPL保険は、モノを扱う多くの業種の企業にとって、あらゆるリスクをカバーするために必要な保険と言えるのです。

  • 01

    消費者の視点からは賠償請求対象は製造業に限らない?

    PL保険に加入しておくべきなのは、飲食業や製造業、工事業などのモノを作る業種だけではありません。PL保険を取り扱っているほとんどの保険会社が、対象業種として、生産物を「製造」または「販売」する業種を挙げています。

    モノを仕入れて売る販売業は製造と関係ないと思われがちですが、ここで大切なのは消費者の視点です。商品を購入する立場からすれば、購入した商品の欠陥で損害を被った場合、その商品を製造した業者も販売した業者も責任があると考えるのは自然な流れだと言えます。

    そのため、販売業を主としている会社もPL保険への加入が勧められているのです。

  • 02

    PL保険であればどこでもいいというわけじゃない?

    ただし、PL保険を取り扱っている保険会社ならどこでも良いというわけではありません。保険会社もそれぞれ補償できる範囲や対応できるリスク、保険金の限度額などの違いがあるためです。

    また、法人向け賠償責任保険には、初めから1つの商品としてあらゆる補償が組み込まれているタイプや、自由に選択して組み合わせていくタイプがあります。保険会社がどのタイプを採用しているかも重要な判断基準です。

  • 03

    包括的な損害賠償責任保険が重要

    製造業や販売業で考えられるリスクとしては、施設に関する損害や作業中のトラブル、不良製造品の出荷に伴う事故などがあります。工場での作業が多い製造業では、従業員が負傷するといった労災にも備えなくてはなりません。

    事故が発生した際、損害を最小限に抑えるためにも、保険会社はあらゆるリスクを包括しているような会社を選ぶと良いでしょう。

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