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損害賠償責任保険の補償範囲
雨漏り

施設等の管理不備によるテナントの雨漏り

入居テナントに雨漏りが生じた際の管理会社の責任とは

自社が所有する物件の管理不備により、入居するテナントに雨漏り被害をもたらした場合、その修繕費やテナントの売上は自社加入中の損害保険によってカバーされるのでしょうか?

施設等の管理不備によるテナントの雨漏りとは

建物の老朽化などに起因する雨漏り事故

自社が所有する建物の管理不備が原因で、入居するテナントの商品等に雨漏り被害をもたらした場合、原則として、そのテナントの修繕費や商品弁償代、休業中の純利益等を、賃貸人は賃貸人に対して補償しなければなりません。

ただし、それら補償費用が保険金から支払われるかどうかは別問題。一般的な漏水被害とは異なり、雨漏り被害については、損害保険の適用が難しいとされる分野だからです。

管理不備が原因の雨漏りについては補償の対象外とされる可能性が高いため、管理会社は保険商品の検討以前に、雨漏りが生じないよう建物全体、特に屋根をしっかりと管理することが望まれます。

施設等の管理不備によるテナントの雨漏りによる事故の事例

賃借しているテナントの管理不備がもたらした事故例

賃借しているテナントに雨漏りが生じた際、もし賃借事業者に管理不備が認められなくても、雨漏りによる商品の棄損や休業による売上補償などを損害賠償される可能性があります。 具体的な事故の例として、以下2つを確認してみましょう。

雨漏りによる一時閉店

賃貸テナントに雨漏りが発生。商品を避難させたうえで、貴重な土曜日の営業を閉店することになりました。当初、売上の補償を約束した管理会社でしたが、雨漏りから2ヵ月後に「補償はできない」との態度に変化。この事例に対し弁護士は「賃貸物件を正常に使える状態に提供する債務」の不完全履行が認められるとし、売上の一部を損害賠償できると判断しました。

度重なるテナントの雨漏り

事業者からテナントを賃借して営業をしていたという車関係の店舗。賃借から3ヶ月経ったころより、やや強めの雨が降ると店内に雨漏りが発生するようになりました。たびたび管理人に修繕はしてもらったものの、今度は別の箇所から雨漏りが発生するなど、改善の見通しはありませんでした。これに対し弁護士は、「事業者は当初から雨漏り物件であったことを知っていて賃貸したのでは?」と疑問を提示。雨漏りの実態の証拠を確保のうえ、賃貸事業者に対し、開業にかかった資金や店舗の転居費用等の損害賠償を請求することが可能と判断しました。

施設等の管理不備によるテナントの雨漏りの企業責任とは

管理側の法的責任

管理不備による雨漏り事故が生じた場合、当該雨漏りによってテナントに生じた各種の被害を、賃借人は補償する必要があるのでしょうか?修繕費、およびテナント休業中の純利益の補償について確認しておきましょう。

  • 01

    修繕費は賃貸人が支払うことが原則

    原則論ですが、民法では「賃借人の収益に必要な建物の修繕の義務」は、賃借人(借りた人)ではなく、賃貸人(貸した人)にあると定められています。よって、テナントに雨漏りが生じた場合、その修繕費用は賃借人が支払うのが原則です。

    ただしこれは任意規定と解釈されているため、賃貸人と賃借人との間に契約上の特別な規定(修繕は賃借人が支払う等)があれば、双方で交わした契約内容が優先されるでしょう。

    なお、契約上で特別な規定を設ける場合、その旨を契約書に明確に記しておく必要があります。修繕に関する責任の所在があいまいな契約については、原則論に応じて賃貸人が修繕費を負うか、または裁判で判断されることになります。

  • 02

    純利益の補償

    賃貸人の管理不備による雨漏りであることが判明し、かつ、テナントが休業を余儀なくされた場合、賃貸人は賃借人に対し、休業期間中の純利益の補償責任を負うことがあります。利益額の大きいテナントで、かつ休業期間が長引いた場合、支払う損害賠償は高額となるでしょう。 なお純利益の推定には、季節的な要因も加味されます。すなわち、テナントの繁忙期に雨漏り事故が起これば、それだけ純利益の補償額も上がると考えましょう。

施設等の管理不備によるテナントの雨漏りが起きたらカバーできる賠償責任保険の範囲とは

大前提ですが、一般的な損害保険において、雨漏り被害が補償範囲に入るケースと、入らないケースとがあります。他の各種の事故・損害とは異なり、雨漏り補償は特殊な分野であることを理解しておきましょう。

雨漏り被害が補償に入るケース(例)


  • ・雹(ひょう)が降って屋根が破損して雨漏りが生じた

  • ・台風で屋根がズレて雨漏りが生じた

  • ・竜巻で飛んできた自転車が屋根を破損して雨漏りが生じた

雨漏り被害が補償に入らないケース(例)


  • ・建物の経年劣化により雨漏りが生じた

  • ・屋根の施工不良により雨漏りが生じた

  • ・リフォームの影響により雨漏りが生じた

上記を見て分かる通り、「自然災害」を直接的な原因とし、その間接的な結果として雨漏りが生じた場合には、損害保険の補償範囲に入る可能性が高いと言えます。一方で、「人的要因」を原因とした雨漏りについては、損害賠償の補償に入る可能性は低いと考えてください。

ただし、各保険会社が用意している損害保険は、商品によりその補償範囲が異なります。最近では、「人的要因」を原因とする雨漏り被害を補償範囲とする損害保険も登場しています。 契約の際には、管理不備による雨漏りも補償範囲に入っているかどうか、また、入っているとすればどのような補償内容なのかを、よく確認するようにしましょう。