経営者が知っておくべき、事業リスクの事例
従業員の労働災害(イメージ)
Risk 06

従業員の
労働災害

労働事故で従業員が長期休業―企業のリスクとは

業務中や通勤途中に従業員が巻き込まれる労働事故も、企業にとって大きなリスクです。いわゆる労働災害とは、どのような事故なのか。事例をふまえつつ、会社としての責任についても紹介します。

従業員の労働災害によるリスクとは

年間12万人が労働災害にあっている

企業にとって従業員はいちばんの資本であり、労働事故によって長期間休まれることは企業にとって大きなダメージを及ぼすことになるといえます。現在、日本では労働災害で4日以上休業または亡くなった方の数は年間約12万人。その原因は、業務中の転倒や転落、ドアに挟まれるなどさまざまです。また、労働災害は大企業よりも中小企業のほうが多いというデータもあります。

従業員の労働災害の種類

労働事故・災害の種類と原因について

従業員の労働災害には、具体的にどのような種類があるのでしょうか。また、その原因や背景には何があるのでしょう。典型的な労働災害のパターンをいくつか紹介します。

  • 事故・ケガ

    業務災害と通勤災害

    業務中に生じたケガ、通勤途中に巻き込まれた事故などが原因の場合。後遺症が残るような場合も労働災害です。一般的には、業務災害と通勤災害に分けられます。

    業務災害の場合、業務と傷病との因果関係があることが条件。業務で使用する設備にトラブルが発生しケガをしたなど、従業員の故意でない労働事故であれば労働災害として認められます。

    通勤災害の場合は、通勤途中に交通事故に巻き込まれた、電車が脱線して負傷したといったケースをいいます。通勤経路が会社に申請しているルートでない場合、例えば出張や顧客先への直行直帰など業務との因果関係等があれば通勤災害として認められることがあります。

  • 病気

    長時間労働などで心の病を抱えるケースが増えている

    業務が原因で病気になった場合です。例えば、作業環境で生じる粉じんなどが原因となりガンを発症したというケースや、長時間労働や過重労働などによってうつ病など心の病を発症したケースも労働災害に認定されることがあります。

    一時期、過労死が問題視されたこともありましたし、最近でも、長時間労働が原因となり従業員が自殺した事件がありました。心の病は目に見えにくい部分もありますが、近年では労働者が50人以上いる事業者に対して「ストレスチェック」を行うことが義務化されるなど、メンタルヘルスの感心は高まりつつあります。

  • そのほか

    不当解雇、セクハラ、パワハラも労働災害に

    リストラを理由に不当解雇をさせられた、あるいはセクハラやパワハラが原因で出社できなくなったなどのケースも、労働災害として最近多くなっています。

    セクハラ(セクシャル・ハラスメント)の場合、宴会の席で体を触られたといったものから、男女関係のうわさを流されたといったものも、労働災害に認定されることがあります。

    一方、パワハラ(パワー・ハラスメント)には、教育指導と称した必要以上の叱責、不当な理由で給料を下げられたなど、事案はさまざまです。

    これらが原因で自殺するという事件も多く、従業員またはその家族による訴訟や賠償請求に発展することもあります。

従業員の労災に関する事例

労働災害で訴訟にまで発展した事例

労働災害は、本人またはその家族が企業を相手取って訴訟を起こすケースもあります。そうしたケースを中心に、労働災害の具体的な事例を紹介します。

  • 電通過労自殺事件

    長時間労働による自殺、和解額は1億6,800万円

    1991年、電通に勤める24歳の従業員が長時間労働が原因となりうつ病を発症。その後、自殺をした事件。遺族側は電通を相手に訴訟を起こし、2000年に1億6,800万円で和解が成立しています。

  • システムコンサルタント事件

    月100時間以上の残業が続き脳幹部出血に

    ソフトウェア開発会社でプロジェクトリーダーであった従業員が突然倒れ、脳幹部出血で死亡。亡くなる前から月100時間を越える残業が続いており、遺族側は過労死であると損害賠償を求めました。賠償額は3,200万円。

  • 南大阪マイホームサービス事件

    過労による突然死、健康配慮義務違反で訴訟

    リフォーム工事会社に勤めていた従業員が、勤務中に発作を起こし亡くなった事件。この従業員は工事現場の清掃からクレーム処理まで多くの仕事を抱えていました。遺族側は健康配慮義務違反があったとして訴訟。3,960万円の賠償額の支払いが命じられました。

  • みくまの農協事件

    精神疾患の病歴のある従業員がうつ病に

    農協の給油所に勤めていた従業員が、うつ病を発症し、その後自殺。遺族側は精神疾患があるなか、多忙な仕事をさせていたとして安全配慮義務違反による損害賠償を起こしました。農協は895万8,540円の支払いを命じられています。

  • 川崎水道局事件

    パワハラを訴えたものの受け入れられず自殺

    川崎市の水道局職員が、上司からの執拗な嫌がらせ(パワハラ)が原因で自殺。この職員は自殺する前に市に対して自らが受けたパワハラを訴え、内部調査を実施させたものの、市はパワハラはなかったと結論。自殺に追い込んだ一因とされました。国家賠償法上の責任で、賠償額は2,100万円。

  • 富士保安警備事件

    劣悪な職場環境、健康診断は未実施で訴訟

    業務中に脳梗塞で亡くなった従業員に、6,294万円の支払いを命じた裁判。この警備会社では健康診断も行っておらず、宿直室も劣悪な環境だったとして遺族側は安全配慮義務違反などで損害賠償を請求しました。

従業員の労働災害に関する企業の責任とは

労働事故や従業員の自殺などで企業が負う責任

労働事故や従業員の過労死、自殺などの労働災害に対して、企業にはどのような責任が負わされるのでしょうか。また、過失が従業員にある場合についても説明します。

  • 01

    どんな責任が問われるのか

    刑事責任、民事上の責任について

    刑事責任としては、労働安全衛生法の「労働災害防止措置」を怠ったとして、業務上過失致死罪が問われることがあります。

    民事としては、不法行為責任や安全配慮義務違反などを理由に、損害賠償を請求されることもあります。

    そのほか、労働基準法第8章の災害補償責任もありますが、労災保険の支給がある場合は免責となります。

  • 02

    過労死や自殺の場合に問われる責任とは

    「健康状態を知らなかった」では責任を逃れられない

    脳梗塞などの死亡した原因(過労死)、自殺した原因が業務と結びつくものであれば、企業側に安全配慮義務違反があったとして損害賠償の責任が生じます。従業員の健康状態を知らなかったとしても、企業には健康診断をさせる義務がありますので、企業側の主張が認められないケースが大半です。

  • 03

    従業員に過失がある場合の責任

    過失相殺で損害賠償額が減額されることもある

    安全衛生教育を無視する、健康を害しているのに生活習慣を改めないなど、過失が明らかに従業員側にあるという場合には、民法418条の過失相殺が行われることもあります。過失相殺を行うには、会社側が従業員の健康状態を把握していることや業務状況などを証明する必要があります。

    とはいえ、損害賠償額が減額されるだけですから、支払いが命じられたら払わなければなりませんし、過労死など重大な事件になれば過失相殺であったとしても企業のイメージダウンにつながるといったリスクは必至です。