経営者が知っておくべき、事業リスクの事例
企業イメージの低下(イメージ)
Risk 02

企業イメージの
低下

企業イメージのダウンがもたらす影響とは

経営陣の不祥事、社員や顧客との損害賠償事件など、どんな会社でも企業イメージをダウンさせるリスクは付いて回るものです。ここで、企業イメージをダウンさせるリスクの要因や影響、さらに経営陣への責任などをまとめて紹介します。

企業イメージ低下の要因

顧客(消費者)を裏切ることがブランド力を低下させる

企業イメージをダウンさせる最大の要因は、「顧客や消費者を裏切る行為をしてしまう」ことに集約されます。時代のニーズにマッチしない経営方針や古い企業体質、コンプライアンス違反なども、企業のブランドをダウンさせる一因と考えられます。

  • ブランドの風化

    自社を代表する商品やサービスであっても、時代のニーズにマッチした展開をしなければブランド力の失態につながります。ターゲットや商品コンセプト、販売方法などしっかりマーケティングリサーチしたうえで提供しなければ、企業イメージまでも低下させます。

  • ブランド力の低下

    いわゆる「ネガティブキャンペーン(風評被害)」のような外的要因だけではなく、企業内における風土(形式ルール、暗黙ルール、社内規準、管理体制など)や、チェックシステムの脆弱性などの内的要因もリスクのひとつです。

  • ブランドの侵害

    例えば、競合他社の人気商品に似た模倣品(偽ブランド)を作るといった行為や、商標権の侵害・ライセンス違反を犯してしまうことで、他社から訴訟を起こされるケース。場合によっては、訴訟を起こしたほうも企業イメージをダウンさせることがあります。

  • ブランドの毀損

    ここ数年、厳しくなってきているのがコンプライアンスの違反。たった一人の社員が起こした不祥事や事件が、企業の経営に大きな影響を与えたり、場合によっては会社側の責任となり経営ができなくなるといったリスクもあります。

最も多い要因~ブランドの毀損とは

安全管理の欠如や信頼の失墜がイメージダウンにつながる

企業イメージの低下につながる要因として、安全管理の欠如や信頼の失墜など「ブランドの毀損」が要因となるケースが最も多くあります。具体的にどんな内容なのかを、ここで紹介します。

  • 01
    安全管理の欠如

    食品

    安全管理が大きく問われる食品業界。異物混入や食中毒、O-157病原菌など安全対策を怠ったゆえに起こる事件は、企業価値を下げ業績悪化にもつながります。場合によっては、被害を受けた方から慰謝料請求など訴訟を起こされることも考えられます。

    製品

    自動車や家電製品など生活に密着する製品に何らかのトラブルが発生し、その影響で利用者に損害を与えてしまうケース。何万台もの製品がリコールとなれば、その回収に大きな損失が生じますし、人命にかかわる事故になると損害賠償事件に発展するケースもあります。

  • 02
    信頼の失墜

    製品・サービスにおける問題

    設計や製造過程における製品の欠陥、リコールなど、信頼性を失う事故が経営に大きな影響を与える事態にもつながります。また、金融サービスや旅行業界などサービス業においても、サービス内容の欠陥がもとになり会社の信頼を大きく失墜させることもあります。

    社員・役員による不祥事

    横領や万引き、不正な現金授受など、たった一人の社員や役員が犯した不祥事が発端となり、会社の信頼を大きく損ねる事件も多く見受けられます。基本的には個人の問題ではあるものの、その人が所属する企業イメージのダウンは避けられません。

    個人情報・機密情報漏えい

    個人情報を多く扱う企業にとって、情報流出・漏えいは会社の信頼失墜に大きく影響してきます。また取引先企業の機密情報などの扱いも、例えば資料の入ったパソコンやタブレットを紛失し、そこから情報が流出することで大きな損失を与えることも考えられます。

ブランドイメージ低下が企業に与えるもの

信頼を失うだけでなく刑事事件に発展することも

ブランドイメージの低下は、売上の減少や経営悪化だけにとどまらず、社会的信用の低下や社内のモラル低下といったことも想定されます。場合によっては、行政からの指導で業務停止や刑事責任が生じる可能性もあります。

  • 行政からの指導

    社会的な影響が大きいとなれば、行政から業務停止や免許剥奪といった指導もあるでしょうし、刑事責任(懲役、罰金)、損害賠償責任などを問われることも考えられます。

  • 社会的信用の低下

    ブランドイメージの失墜だけならともかく、売上の減少も考えられますし、株価暴落、顧客からの取引停止、営業機会の損失といった業績悪化の一因につながる恐れもあります。

  • 売上の減少・業績悪化

    顧客からの信頼を失えば取引停止になることもあります。営業機会の損失により、売上の減少や業績悪化につながることも考えられます。

  • 対策費用の増大

    自社製品・サービスが消費者に損害を与える事態になれば、見舞金・謝罪費など対策費用も生じます。

  • 社内のモラル低下

    目線を社内に向けると、社員に不安や不満が生じるだけでなく、社員のモラルの低下が別の事件を発生させるといった負の連鎖も起こりかねません。

企業ブランドイメージ低下の事例

ブランドイメージ低下がもたらした企業の損失

企業ブランドの低下を招いた事件や事故などの事例と、それにともない企業がどれだけの被害を受けたのか、実際に起きた事例をまとめました。

  • 電通:従業員の過労死(自殺)

    遺族からの損害賠償請求や、取引停止の企業も

    長時間労働が原因で社員が自殺した電通の事件。事態は厚生労働省の強制捜査にまで発展しました。

    電通は1991年にも、今回のケースと同様の長時間労働が原因とされる自殺事件が起きており、社員に対する安全配慮義務を怠ったとして損害賠償請求を起こされています。このときの裁判では、電通が遺族に1億6800万円の賠償金を支払うことで2000年に結審しました。

    また社会に対しての影響も大きく、今回の件でも取引停止を申し出た企業が続出するなど、かなりの損害額が生じるとみられています。

  • 雪印:集団食中毒・牛肉偽装

    安全管理の怠慢と補助金詐欺事件

    2000年、雪印乳業(現:雪印メグミルク)の低脂肪乳を飲んだ消費者が嘔吐や下痢などを起こした集団食中毒事件。スーパーなどから雪印商品が撤去されるなど、ブランドイメージを大きく損ねる事件でしたが、その翌年(2001年)には子会社の雪印食品がBSE(狂牛病)にかかった牛肉を国産牛と偽って販売。農林水産省に買い取り費用を不正請求する補助金詐取事件が発覚し、後に会社清算へと追い込まれました。

  • マクドナルド:異物混入問題

    消費期限切れ問題から続いた負の連鎖

    2014年、マクドナルドの中国工場で期限切れ鶏肉を使用していたことが発覚。これが端を発し、その後もフライドポテトから人の歯が見つかる、デザートにプラスチック片が入っているなど異物混入事件が続出。安全管理が社会的問題にまで発展し、ブランドイメージを大きく失墜させました。マクドナルドは、2016年に300億円を超える赤字を計上しています。

  • 大塚家具、お家騒動

    経営方針の違いが表面化し、ブランド低下に

    同族経営のブランド家具店・大塚家具で起きた、経営方針を巡る内部対立問題。2009年に社長就任した娘の取った方針に、実の父である創業者が不満を抱き娘を解任。その後も親子間の経営対立は続き、2016年に娘が再び社長就任することで決着したものの、ブランドイメージの低下をもたらし、来店客数の減少や店舗縮小などの影響は続いています。

  • 東洋ゴム工業、性能偽装問題

    繰り返されるデータ偽装と不正で赤字転落

    2007年、断熱パネルの性能を偽装していたことが発覚。さらに2015年には、免震機構に用いられるゴム製部品についても性能データを偽装。その後もシートリング検査に関する不正が問題視されるなど、繰り返される偽装と不正が原因で社会的な信頼を失墜し、営業利益は大幅に減少。2016年度の決済では赤字に転落しました。

  • 東芝不正会計問題

    累計2,000億円以上の水増し、旧経営陣に損害賠償請求

    7年間で累計2,000億円を超える利益の水増しをおこなった、東芝の不正会計問題。事件発覚後、株価が暴落し投資家に損失を与えたほか、金融庁は約73億円の課徴金納付命令を出しました。現在、会社側は旧経営陣に対して損害賠償請求の訴訟を起こしています。

企業イメージダウンで経営者が負う責任とは

まずは説明責任を。法的責任に問われることもある

イメージダウンの原因にもよりますが、不祥事によって社員や顧客、株主などステークホルダに対して何らかの損失を被らせた場合、経営者として十分な説明責任を果たす必要があるでしょう。できるだけ早期に説明をおこない丁寧に対応することが、企業が被る損害額を最小限に抑えることにもつながります。

もちろん、説明責任だけで問題が収拾するとは限りません。経営者として監視義務の任務懈怠、故意、過失がある場合には、経営者に法的責任を問われることもあります。

これまでの最高裁の判例を見る限りでは、経営者がコンプライアンス体制を構築し、誠実に実施していれば任務懈怠と判断されることはありません。しかし、コンプライアンス体制の構築などを他の人に任せきりにしていたり、コンプライアンスに違反する行為をしたりすれば、任務懈怠と判断され責任を追及されることになります。