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経営者が知っておくべき、事業リスクの事例
施設等の管理不備による事故(イメージ)
Risk 04

施設等の管理不備による事故

会社所有の建物で起きた事故に対する責任とは

会社が所有する施設や建物などで、管理不備が起因して生じた事故についても事業リスクとして考えられます。具体的にどのような事案が起きるのか、その事例や会社側の責任などを紹介します。

施設等の管理不備による事故とは

建物の火災や看板の落下など管理不備が起因する事故

施設の管理不足による事故として、ビルの火災が一例に挙げられます。2001年に新宿で起きたビル火災では、火災報知機を適切に設置していなかったことや避難器具の未設置など管理不備により多くの死傷者を出し、ビルを管理をしていた会社は総額10億円以上もの和解金を支払ったといわれています。

このほか、化学工場の爆発により近隣に多大な被害を出したケース、お店の看板など外に設置している設備の留具が腐食して落下し通行人にケガをさせてしまうケースなども、管理不備による事故とみなされます。

施設等の管理不備による事故が起きる原因

問題は建設段階にあったか、管理段階にあったか

施設等の管理不備による事故が起こる背景には、どんなことが考えられるのでしょうか。建設段階の問題、管理段階になってからの問題にわけて、原因を追究してみます。

  • 建物・施設の建設段階で問題があったと考えられる原因

    設計・建築段階で安全策を怠った場合

    例えば、人の立ち入りが想定される高所から転落事故が生じた際、適切な高さ・形状の手すりを設けていなかったなどのケースが、建設段階の問題となります。似たような事例で、立体駐車場からバックしていた車が落下するというケースでも、ドライバーの運転ミスもありますが、車止めや柵などの強化不足が原因とされることもあるでしょう。

    このほか、銀行の地下金庫や業務用冷凍室のような閉じ込められる危険性のある建造物については、内部から脱出できるような構造を考慮しておくなど、建築段階に考えておくことでリスクを低減できます。

  • 建物・施設の管理に問題があったと考えられる原因

    利用状況を把握したうえで適切な管理を実施

    一例として、エスカレーターの転倒事故。この場合、利用状況にあわせて係員の配置したり音声で注意喚起をしたりして事故を防ぐための安全策を取る必要があります。

    また、商業施設やテナントビルの火災のケースでは、防火扉の前や非常階段に大きな荷物が置いてあったことで避難がスムーズにできず、被害が拡大したという事例もあります。消防局による定期点検以外にも、ビルを管理している会社が随時見回りをおこない注意喚起するといったことも、事故の抑制、リスクの低減につながります。

施設等の管理不備による事故の事例

火災や転落事故など管理不十分がもたらした事故例

管理段階に問題がある場合はもちろん、建築段階に問題があった場合でも、施設の所有者に管理不備として責任が追及されるケースがあります。

ここで管理不備による事故の事例を紹介します。

  • 歌舞伎町ビル火災

    避難通路にあった障害物が被害を拡大

    2001年、新宿・歌舞伎町のビルで火災が発生。避難通路の確保が不十分であったことから一酸化炭素中毒により44人が犠牲になりました。ビルオーナーには管理責任が追及され、2008年に執行猶予付きの有罪が確定しています。

  • 賃貸住宅の転落事故

    老朽化した手すりにつかまり転落

    賃貸住宅の2階に住む住人が雨戸を開けようとした際、重心を失いよろけ、目隠し用の手すりにつかまったものの転落。裁判では建物所有者に過失があった(建物老朽化で脱落しやすい状態だった)とし、管理会社に損害賠償の支払いを命じています。

  • エレベータの開閉事故

    ホテルのエレベータに挟まれ宿泊客が負傷

    ホテルのエレベータから宿泊客が降りようとしたところ、エレベータの扉に挟まれ負傷。メンテナンスはエレベータ業者に任せていたとはいえ、会社側にも責任があると判決されました。

  • 大人用のプールで子どもが溺死

    往来防止柵がなかったことで損害賠償責任に

    7歳の子どもが大人用のプールに誤って飛び込み溺死した事故。子ども用プールとの間に防止柵が設置されていなかったとして、プールの管理会社および監視員に損害賠償責任が問われ、会社側も使用者責任を認めました。

  • ビル階段の清掃中に起きた転倒事故

    管理会社が注意喚起を怠ったとして有罪判決

    ビルの階段掃除で、洗剤が塗られたところに利用者が侵入し転倒。重度の負傷を負いました。清掃中のため立ち入り禁止にするなど注意喚起を怠ったとして、ビル管理会社に1,000万円の支払い命令が下りました。

  • 居酒屋の2階窓から転落して重症

    窓柵の設置がなく瑕疵ありと判決

    居酒屋の2階(座敷)の窓から利用客が転落して重症を負った事故。窓には手すり(窓柵)がなかったこと、利用客が酔った状態のため通常より運動能力の低下が想定できることなど、工作物の設置に瑕疵があると認定されました。

施設等の管理不備による事故の企業の責任とは

法的責任と管理者・所有者の責任について

管理不備による事故が生じた際、そのビルの所有者や管理者にはどのような責任が生じるのでしょうか。法的な責任(刑事・民事)や、所有者と管理者の責任追及などをみてみましょう。

  • 01

    法的な責任

    刑事責任と民事責任について

    刑事責任においては、「業務上過失致死傷(刑法211条)」に問われることがあります。また、ビル火災の場合には「業務上失火罪(刑法117条の2)」も追及されることがあります。いずれの場合も、会社側が注意を怠ったと認められた場合には処罰されます。

    また、民事上の責任においては主に3種に分かれます。建物の瑕疵に問題がある場合の「工作物責任」、安全配慮義務を怠った場合の「一般不法行為責任」、当事者間の契約関係で建物所有者が負うべき安全配慮義務に違反した場合の「債務不履行責任」の3つです。

    工作物責任に関して、占有者(テナント入居者など賃貸契約を交わしている人)に過失がないと判断されれば建物所有者が責任を負うことになります。

    一般の人(テナントの客など賃貸契約を交わしていない人)が負傷した場合も、たとえ管理をしっかりしていたと主張しても、責任は逃れられないのが一般的です。

  • 02

    管理者・所有者の責任

    契約上の義務違反があれば管理者にも責任がある

    一般的に建物の所有者と管理者との間では管理委託契約を交わしています。その契約上で義務違反行為などがある場合には、所有者は管理者に対して契約責任(損害賠償責任)を追及することがあります。また、管理不備による事故の原因が管理者にある場合には、所有者等から求償されることがあります(管理者に注意義務違反等の過失がある場合)。

    このほか所有者には、テナントに被害が生じた場合に債務不履行責任が問われることもありますし、火災があった際には消防法などの規定に基づき行政責任を問われることもあります。