【社外リスク】業種別に見る会社の賠償責任事例

運送業実際にあった訴訟・判例

交通事故をはじめ運送業で損害賠償となった事例集

バスに大勢の乗客を乗せて転落事故──こんな惨事は全体に避けたいものですが、運送業では特に車両事故を起こしやすい事業特性もあり、損害賠償責任を問われた訴訟とその判決を紹介します。

  • 運送業における訴訟・判例1「協和エンタープライズ事件」

    過重労働から運転中の死亡事故に至った事例

    • 事件名:協和エンタープライズ事件
    • 提訴年月日:-
    • 裁判所:東京地裁
    • 原告:大型貨物自動車の運転手とその父親
    • 被告:運送会社とグループ会社及びその経営者など
    訴訟内容
    被災者は大型貨物トラックの運転手。業務で高速道路を走っていた時、不注意によって前方を走っていた車両に衝突して死亡した。訴えたのは被災者の父親で、運転手が注意を怠ったのは超過勤務させられたことが原因だとしている。
    請求額
    2200万円
    争点
    交通事故の直接的原因となった運転手の注意力低下は超過勤務によるものかどうかがポイント。労働環境に問題があって、健康な状態で運転業務ができなかったとすれば、運送会社側の安全配慮義務の債務不履行や不法行為があるとして、損害賠償責任を問われることになる。
    判決内容
    判決では、この事件以前から運転手が過重労働で疲労困憊だったことや注意力が落ちていたことで、事故が発生したと認めている。これによって、運転手を雇用していた運送会社の労働時間管理や、従業員に対する安全・健康面の配慮義務に違反していて、過失があると結論づけている。
    認容額(賠償額)
    2600万円(ただし素因減額により2割減額、損益相殺により減額)
  • 運送業における訴訟・判例2「ヤマト運輸事件」

    大手運送業営業所内で起きた車両事故と暴行事件

    • 事件名:ヤマト運輸事件
    • 提訴年月日:-
    • 裁判所:東京地裁
    • 原告:業務委託を受けた会社の従業員
    • 被告:運送会社及びその支店長や社員
    訴訟内容
    被災者は被告企業とは別会社の従業員で、被告企業の営業所内でフォークリフトにぶつけられるという事故に遭った。さらに、被告企業の従業員から後日暴行を受けるなどして、車両事故と暴行事件の両方について訴えを起こした。
    請求額
    860万円
    争点
    原告は、車両事故については障害慰謝料と後遺障害慰謝料を請求している。後遺障害は併合11級。暴行事件についても同様に障害慰謝料と後遺障害慰謝料を請求。被告企業及び事故当時の支店長に対しては、両事件とも被告としていて、原告によると支店長は暴行の実質的首謀者ともしている。
    判決内容
    判決では、車両事故については障害慰謝料と後遺障害慰謝料とも一部過失相殺としながらも損害賠償請求が認められた。一方、暴行事件については共謀を裏付ける証拠がないことなどから不法行為が認められず、こちらは認容額0円としている。
    認容額(賠償額)
    490万円(ただし過失相殺により1割減額)
  • 運送業における訴訟・判例3「運転手と運送会社に32億円賠償命令」

    タンクローリーの炎上事故で32億円超の賠償命令

    • 事件名:運転手と運送会社に32億円賠償命令
    • 提訴年月日:-
    • 裁判所:東京地裁
    • 原告:首都高速道路
    • 被告:タンクローリー運転手及び輸送業務を委託した出光興産
    訴訟内容
    首都高速道路を走行していたタンクローリーが炎上してしまったことで、原告である首都高速道路が橋の架け替えといった損害請求を起こした事件。タンクローリーは出光ロゴがあったため、運転手だけでなく出光興産も被告とした。
    請求額
    -
    争点
    輸送業務を請け負っていた運送業者は共済保険に加入しており、10億円程度の支払いを原告に対して行っていたが、通行規制や橋桁の変形なども合わせると損害額がかさんでいたことが訴訟のポイント。また、業務の委託元である出光興産に対する使用者責任も問うていた。
    判決内容
    東京地裁の判決では、タンクローリー運転手とその勤務先である運送業者に対して32億円を超える支払い命令を出している。一方、出光興産の責任については、個々の運送業務に対して同社が運転手を指揮監督する立場とはいえないとして、出光興産への請求は棄却された。
    認容額(賠償額)
    328000万円
  • 運送業における訴訟・判例4「信濃輸送事件」

    トラック運転手の腰痛の原因は労働環境にあり

    • 事件名:信濃輸送事件
    • 提訴年月日:-
    • 裁判所:長野地裁
    • 原告:トラック運転手
    • 被告:運送業者
    訴訟内容
    原告はトラック運転手として被告の運送業者で働いていた。業務は荷物の積み下ろしや運送で、作業中に腰痛を訴えて入院。腰椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄と診断されて、労災認定も受けていた。今回の訴訟では被告企業の使用者に対する安全配慮義務違反を問うている。
    請求額
    4037万円余
    争点
    原告の主張は、腰椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄になったのは過重労働が原因であり、被告の運送業者は使用者に対する安全配慮義務違反があるとしている。一方、被告側の主張としては、1回あたり3〜4トンの積み下ろし作業は過剰といえず、年2回の健康診断を実施して安全配慮義務に違反はしていないとした。
    判決内容
    判決では、荷物の積み下ろしで使う補助器具などを使っていないどころか台車すらなかったことや、拘束・労働時間などが労働大臣告示による基準を大幅に超えていたことなどを理由として、被告企業の安全配慮義務違反があり、損害賠償責任を認めた。
    認容額(賠償額)
    3971万円余
  • 運送業における訴訟・判例5「高額貨物の賠償」

    呉服や毛皮を輸送中に運転ミスで焼失させてしまった

    • 事件名:高額貨物の賠償
    • 提訴年月日:-
    • 裁判所:神戸地裁
    • 原告:荷主
    • 被告:トラック運転手と運送会社
    訴訟内容
    運送会社のトラック運転手が高速道上で脇見運転をしたため追突事故を起こした。それによってトラックは横転炎上して、当時の積荷であった呉服や毛皮、紳士服などを全焼してしまった。原告は荷主で、呉服や毛皮といった高価な貨物の損害賠償を請求した。
    請求額
    26135万円
    争点
    被告である運送業者の主張は、億単位の高価な貨物であることを知らされていなかったため、運送契約に基づく債務不履行は認めたものの、商法の「高価品の特則」による免責を訴えた。原告側としてはあくまで運送契約に違反するとして総額を請求した。
    判決内容
    裁判所の判断では、高額な貨物であることを伝えていれば損害を防げた可能性があることに言及、荷主にも過失があるとして認容額は請求額の5割とした。なお、運転手の過失が事故の原因であり、被告側には不法行為責任があるとしている。
    認容額(賠償額)
    約13000万円

万が一訴訟になっても困らないために

乗客を乗せたバスの大事故など経済的リスクに備える

乗客を乗せたバスによる事故の賠償額は、場合によってはとても大きな金額となります。乗客に危害を加えてしまった時はさらなる大きな賠償金も必要となるため、企業にとっては起こりうるリスクをある程度想定しておくことが必要となります。そのため、従業員が安全に運転できるような配慮や取り組みを会社側が心がけておくようにしておかなければなりません。未然に防止策をとっておくことで、事故やトラブルを最小限にまで留めることができます。

しかし、生じるリスクを完全に無くすことは難しいため、万が一の問題が起きてしまった場合に対応できるよう、賠償責任保険への加入も欠かすことはできません。予期せぬ事故で多額の損害賠償を請求された場合、訴訟などにかかる莫大な費用で会社の存続自体が危ぶまれてしまうことも十分ありえます。賠償責任保険はそういった会社側の損害の補償を受け持ってくれるため、最悪の事態が起きてしまった場合においても対処することができます。

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