【社外リスク】業種別に見る会社の賠償責任事例

サービス業ほか実際にあった訴訟・判例

施設やサービスの管理責任で損害賠償された事例

ホテルや旅館などでは建物の安全管理責任も重要ですが、多くのサービス業ではプロとして提供サービスの管理責任が大切。その賠償責任を問われた訴訟とその判決を紹介します。

  • サービス業における訴訟・判例1.「ホテルベランダ転落死亡事件」

    ◆「ホテルベランダ転落死亡事件」(判例934号99頁)
    ・観光ホテルの大浴場から転落死!損害賠償責任は?

    • 事件名:ホテルベランダ転落死亡事件
    • 裁判所:福岡地裁
    • 結審日:昭和54年4月14日
    • 参照法令:民法717条に規定されている「土地工作物責任」に関する事項
    • 原告:転落死した入浴客の遺族
    • 被告:観光ホテル
    訴訟内容
    建物の8階に大浴場がある観光ホテルで、入浴客が窓からベランダに出て、そこから転落死した事故。当時、入浴客は飲酒をしていて酔っ払っていた状態。大浴場の窓は開閉することができて、ベランダには60cm弱の柵があるもののベランダに出るのは容易で、転落防止設備はなかった。
    請求額
    -
    争点
    大浴場の窓は開いていて、下が見えにくいことから高所という危険度がわかりにくい構造になっていた。危険に対する注意喚起などもなく、ベランダには転落防止設備がないなどの理由から、原告側は施設建物の設置・保存の瑕疵があるといて訴えた。
    判決内容
    裁判の結果、アルコールを摂取した入浴客を含めて様々な人が利用する施設としては、安全性をきちんと確保するべきという基本的考え方に基づいて、観光ホテル側の建物に過失があることを認めた。一方、転落死した入浴客にもベランダに出たことの過失があるとして、5割の過失相殺とした。
    認容額(賠償額)
    -
  • サービス業における訴訟・判例2.「一酸化炭素中毒事件」

    ◆「一酸化炭素中毒事件」(判例845号94頁)
    ・換気設備の安全対策で損害賠償請求された旅館

    • 事件名:一酸化炭素中毒事件
    • 裁判所:札幌地裁
    • 結審日:昭和51年8月30日
    • 参照法令:民法717条に規定されている「土地の工作物責任」に関する事項
    • 原告:死亡した宿泊客の遺族
    • 被告:旅館
    訴訟内容
    旅館に泊まった宿泊客が、客室でガスストーブを付けたまま寝たところ、次の日の朝に一酸化炭素中毒で発見され、その後に亡くなった。ガスストーブには煙突が付いておらず、客室の換気も窓以外にはできないで部屋で、ストーブの不完全燃焼や換気不足が事故のきっかけと考えられる。
    請求額
    -
    争点
    窓と出入り口以外に換気設備がない部屋に、煙突のないガスストーブを暖房器具として設置したことに加えて、暖房器具を使うような寒い時期に、宿泊客自身が窓を開けて換気することを期待するのが適当なのかといった点など、宿泊施設としての瑕疵が問われた。
    判決内容
    今回のような事故で、旅館やホテルに関連する建築基準法や旅館業法に違反しているかどうかもさることながら、今回の裁判では安全性という意味で宿泊施設として本来あるべき設備が十分だったのかを判断材料としている。その結果、換気設備や利用者への安全対策がなされていない瑕疵を認めた。一方、宿泊客の過失もあるとして過失相殺は7割とした。
    認容額(賠償額)
    -
  • サービス業における訴訟・判例3.「エレベーター転落事件」

    ◆「エレベーター転落事件」(判例1508号138頁)
    ・エレベーター事故で経営者の工作物責任が問われた

    • 事件名:エレベーター転落事件
    • 裁判所:東京地裁
    • 結審日:平成5年10月25日
    • 参照法令:民法717条に規定されている「土地工作物責任」に関する事項
    • 原告:廃品回収業者
    • 被告:工場経営者
    訴訟内容
    原告の廃品回収業者は、今回の事故が起きた工場に外部業者として出入りしていた。当日、作業用エレベーターに乗るため、手動式外扉を手で開いたところ、簡単に空いたのでエレベーターが来ていると思って足を踏み入れたところ、エレベーターが来ていなかったため、4m弱転落して、大ケガを負った。
    請求額
    -
    争点
    裁判で損害賠償責任を問われたポイントは、この工場に建築基準法や同法施行令に基づく違反などがあったのかどうか。そして、工場経営者に工作物責任があるのかどうか。細部で見れば、エレベーターが当該フロアに来ていないにも関わらず、外扉が開くことなども問題となった。
    判決内容
    裁判所の判断では、工場経営者には工作物責任があるとされ、建築基準法による安全装置を設けていなかったことに関する瑕疵があるとした。これによって、原告の請求内容は一部認容されたが、一部は棄却される結果となった。
    認容額(賠償額)
    -

訴訟は企業経営に何らかの禍根を残します!

事故は予測困難だからこそ賠償責任保険によるリスク低減が必要

施設整備が進み、近年は少なくなっているとはいえ、これまでの判例で取り上げた民法717条に規定されている「土地工作物責任」による賠償責任は、サービス業にとっては致命的です。


不特定多数のお客様がビジネス対象であり、お客様同士の接点も多くなるのがサービス業です。特にホテルなどは規模が大きくなるほど、予測しづらいトラブルや事故が様々なシーンで起こり得るものです。万が一の事故が起きてしまうと損害賠償請求や慰謝料などの経済的損失が大きくなるだけでなく、イメージダウンで客数減少やサービス停止などに陥ることもあります。サービス業はブランドイメージでビジネスが成り立ち、ビジネス対象がブランドイメージに左右されやすい性質の個人顧客なだけに、たった一度の事件による被害は甚大です。


いつ何が起きるか分からない以上は、予防保全的に賠償責任をサポートする保険に加入しておくことがとても重要です。


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  • サービス業における訴訟・判例4.「エステサロンでアトピー再発」

    ◆「エステサロンでアトピー再発」(判例1765号67頁)
    ・誤った医療知識で施術したエステサロンの過失責任

    • 事件名:エステサロンでアトピー再発
    • 裁判所:東京地裁
    • 結審日:平成13年5月22日
    • 参照法令:民法715条に規定されている「使用者等の責任」に関する事項
    • 原告:消費者
    • 被告:エステティックサロン経営会社
    訴訟内容
    原告は過去にアトピー性皮膚炎を患い寛解した経験があり、エステサロンで顔のにきびをきれいにしようと、過去のステロイド剤使用なども告げて施術を受けた。その後、アトピーが全身に出るなどしたところ、被告のエステサロン側は複数のスタッフが「ステロイドのリバウンド」と答えるなど改善に向かわず訴訟となった。
    請求額
    -
    争点
    原告は皮膚科の診療を受けてステロイド剤が身体に残ることはないなど医療的説明を受けた。エステサロンに対しては、スタッフの不法行為に対する経営会社の使用者責任などを問うことに。また、アトピー性皮膚炎とエステサロンでの施術との因果関係が争点となった。
    判決内容
    原告が初めてエステサロンでの施術を受けた翌朝に症状が出ていることなどから、裁判では施術とアトピーの因果関係が認められた。また、被告側の説明には医学的な誤りがあることから、エステサロンの運営に過失があるともされた。
    認容額(賠償額)
    350万円(ただし過失相殺により3割減額)
  • サービス業における訴訟・判例5.「ペットホテル犬5頭死亡事件」

    ◆「ペットホテル犬5頭死亡事件」(判例-)
    ・飼育管理を委託されるプロとしての責任が問われる

    • 事件名:ペットホテル犬5頭死亡事件
    • 裁判所:千葉地裁
    • 結審日:平成17年2月28日
    • 参照法令:民法657条に規定されている「寄託契約の債務履行」に関する事項、民法400条に規定されている「特定物の引き渡しの場合の注意義務」に関する事項、民法248条に規定されている「附合、混和又は加工に伴う償金の請求」に関する事項
    • 原告:犬のブリーダー
    • 被告:ペットホテル経営者
    訴訟内容
    犬のブリーダーである原告は、ペットホテルに犬の飼育管理を委託。その間に、預けていた犬が死亡したため、財産としての損害賠償を請求、加えて精神的苦痛を被ったことに対する慰謝料を請求した事例。ペットホテルに預けたのは合計9頭で、5頭が死亡し、ほかに2頭がケガを負った。
    請求額
    1200万円
    争点
    犬の死亡やケガの原因が、預かっていた犬同士のけんかによるものなのか、もともと健康に問題があったり高齢であったことなどに起因するのかなど、損害の原因がどこにあるのかで双方の主張が異なった。また、損害賠償の根拠となる、犬の市場価値についても双方では言い分に違いがあった。
    判決内容
    判決では、被告の保管中に死亡した犬の損害を認めたものの、財産的価値としては購入価格などよりはかなり減額される結果となった。また、飼育管理を委託されるプロとしては、被告は適切な管理をする義務を負うものとして、犬の状態に関する指示を受けていなくても免責はされないとした。
    認容額(賠償額)
    150万円

恐いのは、土地工作物責任だけじゃない!

サービス業についてまわるリスクに対応するには?

結審した賠償額の多少も気にはなりますが、そもそも賠償額が発生すること自体から、その背景を考慮すると経営に抱える多大なリスクを覚悟する必要があるでしょう。賠償額が少額で収まれば、ひとまずそこへの対応はできますが、結審後も事故や事件が起きる前のように通常営業ができ、同様の収益を上げられるでしょうか?


場合によっては行政指導や施設の合法化改修などにより休業を迫られる必要が出てくるかもしれませんし、訴訟によって傷ついたブランドイメージを回復するには多大な労力と時間を要することでしょう。訴訟原因が法的根拠に基づかない理不尽なクレームである場合などを除き、よほどのことが無い限りは、訴訟が発生した時点で収益のマイナス計上を覚悟しなければなりません。その逸失利益をいったい誰が補償してくれるのでしょう。


不特定多数の顧客をビジネス対象としている業態である以上は、事故や事件は、思いがけないところから発生します。予期せぬ事故や事件は、対処にも苦労をするうえに、予防保全的な対応策を持っておかないと、事後にはどうすることもできません。金融機関から受けている融資額の回収や、人件費を含む固定費などを考慮すると、短期的な月次収支に対する視点だけでは対応がままなりません。


定期的な保険料の支出だけで、思いがけない事故や事件に際する包括的な関連補償を担保できれば、経営リスクは大きく払拭されます。検討すべきは、部分的な補償よりも、包括的な補償が約束されている損害賠償責任保険ではないでしょうか?


包括的に補償される法人向け損害賠償責任保険は?
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