【社外リスク】業種別に見る会社の賠償責任事例

建設・工事業で実際にあった訴訟・判例

訴訟・判例から学ぶ損害賠償請求への備え方

専門的なスキルが要求される現場での業務であるため、建設・工事業は事故が起きやすい傾向にあります。そのため、被災者からの損害賠償請求訴訟も後を絶ちません。また、請負の多層化で事故の責任所在が複雑になり、場合によっては、孫請会社の従業員から訴えられることもあるのです。ここでは、そんな建設・工事業で実際にあった訴訟・判例をご紹介。また、損害賠償請求へ備えるための方法を掲載しています。リスクを回避するためにご参考ください。

  • 建築・工事業での訴訟・判例1「一人親方からの損害賠償請求」

    一人親方からの損害賠償請求事例:元請工務店の安全配慮義務違反による賠償

    • 事件名:H工務店(大工負傷)事件
    • 提訴年月日:-
    • 裁判所:大阪高裁
    • 原告:一人親方の大工
    • 被告:元請工務店
    内容
    下請けの一人親方が元請の工務店に対して賠償請求したケースです。原告は、30年以上のキャリアを持つベテラン大工である一人親方。 住宅の建築現場2階での作業中に誤って地面に落ちてしまい、頚椎脱臼骨折・両手関節骨折といった重傷を負う。裁判では、被告である請負業者に賠償責任があるかが問われた。一人親方は、自身が所有する大工道具や工務店が所有する電動工具などを使用し、工務店の指示通りに作業。現場には転落防止ネットや足場などが設置されていなかったが、継続して仕事を受けたいと考えていた一人親方は不満を言えずに仕事を受けていたという。ただ、自身で命綱をつけていなかったり、地下足袋ではなく運動靴で作業をしていたりと不注意な点も見受けられる。
    請求額
    -
    判決内容
    地裁の一審では請求が棄却されたものの、高裁では請負契約による使用従属関係があるとし、被告側の安全配慮義務違反を認めるとした。逸失利益や慰謝料の合計は2,992万円。過失相殺し、工務店側に2割相当の金額支払いが命じられた。
    認容額(賠償額)
    658万円
  • 建築・工事業における訴訟・判例2「孫請労働者遺族からの損害賠償請求」

    下請業者からほぼ丸投げされた業務での孫請業者労働者の死亡事故

    • 事件名:O技術(労災損害賠償)事件
    • 提訴年月日
    • 裁判所:福岡高裁
    • 原告:孫請労働者の遺族
    • 被告:元請業者
    訴訟内容
    孫請業者の従業員が亡くなった事件。被災者は当時現場で、擁壁を設置したり、床堀の埋め戻しをしたりする作業を担当していた。現場で鉄板が倒れ、土壁と鉄板に挟まれたことで死亡。被災者の遺族は元請業者に対して、安全配慮義務違反であると損害賠償を請求した。 なお、元請業者の現場代理人は、一般的な安全教育は行っていたが、作業に関する直接的な指示は出していなかった。また、下請業者の現場代理人もいたが、現場に常駐はしておらず、実質的に孫請業者へ丸投げしていた状態であったと言う。
    請求額
    -
    判決内容
    一審では元請業者に安全配慮義務はないとして請求が棄却。しかし、高裁では一転して元請業者の安全配慮義務違反が認められる結果となった。なお、被告は請負契約にあたって建設労災補償共済制度に加入。下請業者の人員も被共催者としている点などが考慮された。
    認容額(賠償額)
    4,341万円
  • 建築・工事業における訴訟・判例3「エムテック事件」

    元請業者、下請業者、孫請業者、派遣会社など、複数の安全配慮義務が問われた事故

    • 事件名:エムテックほか事件
    • 提訴年月日:-
    • 裁判所:高松高裁
    • 原告:とび職人
    • 被告:元請業者
    訴訟内容
    とび職の男性が計5社を相手取り、賠償請求した訴訟。被災者であるとび職の男性は、2つの企業を介し孫請業者へ派遣。高速道路の高架橋建設に作業者として入っていたところで転落事故に遭い、骨折などの大ケガを負った。
    請求額
    600万円
    争点
    今回の被告は、「元請業者・下請業者・孫請業者の3社」と「被災者と雇用契約を結んで別会社に派遣した会社」と「孫請業者に被災者を派遣した会社」の計5社。この5社に対して、安全配慮義務違反があったかどうかが争点となった。
    判決内容
    判決で下請業者を除く4社に安全配慮義務違反があったと認定された。認容額は過失相殺による1割を減額して確定。なお、下請業者については、現場の作業員に対して直接指示する関係にないことから、安全配慮義務の責任を負わないという判断であった。
    認容額(賠償額)
    450万円(ただし過失相殺により1割減額)
  • 建築・工事業における訴訟・判例4「O技術事件」

    土木工事現場の事故で亡くなった作業者の遺族への賠償

    • 事件名:O技術(労災損害賠償)事件
    • 提訴年月日:-
    • 裁判所:福岡高裁
    • 原告:被災者の妻子
    • 被告:土木工事業者と元請業者
    訴訟内容
    被災者は、土木工事を行う孫請業者に雇用され、賃金を日当で受け取っていた。工事中の事故によって亡くなり、残された妻と子が元請業者と孫請業者を相手取り、安全配慮義務違反があると訴えた。なお、和解が成立したため下請業者は被告になっていない。
    請求額
    3,500万円
    争点
    死亡事故に至った当該工事において、元請業者と被災者の雇用業者に安全配慮義務違反があったかどうかが争点となった。なお、被災者の 雇用業者は孫請業者であり、雇用関係があったと考えられる。
    判決内容
    元請業者・孫請業者の安全配慮義務違反が認められた。原告である被災者の妻と子にとって被災者は家族の大黒柱であったことを加味する一方で、過失相殺もあるとし、容認額の3割が減額となった。
    認容額(賠償額)
    2,800万円(ただし過失相殺により3割減額)
  • 建築・工事業における訴訟・判例5「Y興業事件」

    解体工事のアルバイトで重傷を負った賠償責任

    • 事件名:Y興業(アルバイト労災)事件
    • 提訴年月日:-
    • 裁判所:東京地裁
    • 原告:解体工事のアルバイト作業員とその両親
    • 被告:アルバイトを雇用していた個人事業主
    訴訟内容
    被災者は、建物の解体工事を手掛ける企業でアルバイト勤務。ある家の解体作業中に2階から転落し、脊髄を損傷する大ケガを負った。原告は被災者とその両親。労災は認定されていたが、両下肢の麻痺で障害等級1級3号になったことに対する損害賠償を請求した。
    請求額
    3,734万円
    争点
    転落防止措置をしていなかった業者の不法行為や安全配慮義務違反があるかどうかが争点となった。
    判決内容
    後遺障害慰謝料については、原告と被告で金額の合意があったが、支払方法で合意に至らなかった。裁判所はその点や両親への慰謝料を考慮した上で認容額を決定した。
    認容額(賠償額)
    3,075万円(ただし過失相殺により1割減額)

万が一訴訟になっても困らないために

万が一の訴訟に備えるための請負業者賠償責任保険

建設・工事業では、元請けから最終的な作業を行う孫請けまで業務を委託していることで責任を認められる範囲が広くなりがちです。判例から分かるように、下請け業者を信頼した結果任せきりになってしまい、指示不足や安全対策を怠ったことで大きな損害を生んでしまうしまうことも十分にありえることです。トップである元請け業者にも損害賠償を求められることがあるため、訴訟に備えておく必要があります。

そのため、企業は賠償責任保険に加入しておくことで大きなリスクに対応できるようにしておかなければなりません。加入しておくと、工事や作業で起きた対人・対物事故により損害が出てしまった際などに補償を受けることができます。万が一の場合に備え、自社業務におけるあらゆる領域をカバーできるような保険をかけておくようにしましょう。

しかし請負業者賠償責任保険では、作業中の事故で賠償責任を負ったケースにのみ対応することができないため注意が必須です。賠償責任保険に加入する場合は、自社の損害や作業後の損害も補填できる保険を選ぶと良いでしょう。